研究実績の概要 |
前立腺癌はいずれホルモン療法に抵抗性となり死に至る。近年、新規ホルモン療法薬として、従来の抗アンドロゲンよりも、アンドロゲンの核内移行や下流の遺伝子のpromoterとしての働きをより強く阻害する作用を有する。強い抗アンドロゲン作用の下で、遺伝子変異を起こし、アンドロゲン不在下での前立腺癌の増殖能を獲得した癌の形態のひとつに、神経内分泌癌がある。その診断は、血液学的にProGRP, NSE, CEAなどの高値が、組織学的にはCD56, ChromograninA, NSE, Synaptophysinの陽性が知られているが形態学的診断も兼ねる。遺伝子的にはp53、RB遺伝子の欠失などが報告されているが、前立腺神経内分泌化の機序は未だ明らかではなく、治療法も肺小細胞癌に準じた化学療法(シスプラチン、エトポシド併用化学療法)が行われている。本研究では、前立腺神経内分泌化の要因の一つにInsulin-like growth factor binding protein-3 (IGFBP-3)が関与するのではないかとの仮説をたてた。その根拠として、これまで行ってきたmicro-RNAの網羅的研究において、miR-421がIGFBP-3を抑制的にコントロールし、去勢抵抗性前立腺癌においてはmiR-421の発現が低下することでIGF-BP-3の発現が高値となることが示されたことが挙げられる。その結果、epithelial-mesenchymal transition (EMT)が促進されることで前立腺癌神経内分泌化が促進する可能性がある。 これまで行った実験は1.神経内分泌化の臨床所見を示した前立腺癌患者の生検組織におけるIGFBP-3の発現を免疫染色にて解析した。2.神経内分泌化の臨床所見を示した患者とそうでない患者における血清中のIGFBP-3の値を、ELIZAを用いて測定した。
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