研究課題/領域番号 |
20K09587
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研究機関 | 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪急性期・総合医療センター(臨床研究支援センター) |
研究代表者 |
角田 洋一 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪急性期・総合医療センター(臨床研究支援センター), 泌尿器科, 副部長 (40710116)
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研究分担者 |
奥見 雅由 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60512978)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 腎移植 / 抗体関連型拒絶反応 / B細胞 |
研究実績の概要 |
ラット皮膚移植モデルを用いて腎移植を行ったモデルにおいて、メモリーB細胞の状態を評価できる可能性があるマーカーをいくつか同定した。このマーカーの有用性について、ドナーペプチドを皮下に注入したラット感作モデルに腎移植を行い、マーカーを評価する予定であったが、これまでの実験においてドナーペプチドで感作させたラットに腎移植を行ったが、抗体関連型拒絶反応は発生しなかった。そこで、ドナーペプチドの量を増量したが、抗体関連型拒絶反応は発生しなかった。このため、このラット腎移植モデルを用いてB細胞マーカーの有用性を評価することは困難であると判断された。メモリーB細胞が反応していることは確認できたため、今後は観察期間を延長して評価していく予定である。 ヒトの血清を用いた研究において、昨年は脱感作療法を行ったドナー特異的抗体陽性腎移植症例におけるB細胞系マーカーの評価は困難であった。これは脱感作療法の中にリツキシマブが含まれていたことが原因と考えられた。リツキシマブはリンパ球B細胞やB細胞性リンパ腫細胞に発現しているCD20抗原というタンパク質に結合し、結合した細胞を破壊(溶解)する。脱感作療法の①前、②後(移植前)、③移植後における患者の末梢血単核細胞を用いて特定したB細胞マーカーの発現をRT-PCRにて評価を1例であるが行った。マーカーは①→②は低下していたが、②→③においては上昇していた。今後は症例数を増やして、また臨床経過との関連について評価していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
ドナーペプチドを用いたラット腎移植感作モデルに同種腎移植を施行しても抗体関連型拒絶反応は発生せず、同定したマーカーの有用性を評価することが出来なかったため遅れている。 投与するドナーペプチドの量が少ないことが理由の1つではあると考えられたため、10倍量を投与して同じモデルを作成したが、抗体関連型拒絶反応は発症しなかった。ラットの種を変更しても結果は同じであった。ラットにおいてはアロのメモリー応答がActiveな状態においては抗体関連型拒絶反応は発生するが、メモリー応答がLatentな状態においては腎移植を行っても拒絶反応は発生しない、またはドナーペプチドではLatentな状態にもなっていないことが原因であれが、観察期間を長くすることによって拒絶反応が発生する可能性があると考えられるため、現在観察期間を延長して評価を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
上記にように引き続きラット腎移植感作モデルの作成を行っていく。腎移植1ヵ月目に血清を採取しドナー特異的抗体の有無、また移植腎を摘除し病理学的に拒絶反応の有無、C4d染色による補体沈着の有無についての評価を行う。抗体関連型拒絶反応の発生が確認できれば、同じモデルを用いて腎移植後1週間毎にマーカーの評価を行っていく。拒絶反応が確認できなかった場合はドナーペプチド以外を用いた感作モデルの作成を考慮する。 また、ヒトにおけるB細胞マーカーの有用性を同時に評価していく。すでに1例行っているが、リツキシマブを使用しないで免疫グロブリンと血漿交換にて脱感作療法を行った症例であるが、マーカーが脱感作療法の前後、腎移植の前後で発現が変化していることが確認できた。臨床経過との関連を評価するためには、症例数の蓄積が必要である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究が大幅に遅れているため。 原因としては、動物モデルの作成がうまくいっていないこと、COVID-19蔓延により一時動物実験を行うことができなかったことが挙げられる。
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