これまでの研究結果によると、感作によりメモリーB細胞が増加していたが、その有用なマーカーを見出すことは困難であった。そこでドナー反応性メモリーB細胞(DMBC)自体を用いて評価することにした。ラット抗体関連型拒絶反応(ABMR)モデルに用いてる感作モデル(皮膚移植)からPBMCを採取し、これまでのメモリーB細胞のマーカーを用いてフローサイトメトリーでメモリーB細胞を分離し、実験に用いた。特定のサイトカインとDAラットの抗原を加えて刺激すると、ドナー特異的な抗体が産生された。これによりDMBCが含まれることが確認された。しかし、すべての細胞がDMBCではなかった。このため、DMBCに特異的なマーカーを同定することは困難であると考えられた。腎移植を行うと、ドナー特異的抗体(DSA)が産生され、short-lived plasma cell (SLPC)が認められ、DMBCがSLPCに分化したと予想されるが、そのリスクを腎移植前に予測する因子やマーカーを同定することはできなかった。 そこで、このDMBCの脱感作療法後のマーカーとしての有用性をヒトの検体を用いて測定することとした。これまで25例の脱感作療法を行ってきたが、このうちリツキシマブを使用しなかった8例を用いて検討を行った。8例中4例にABMRを認めたが、うちDSAが陽性であった症例は2例で残りの2例は陰性であった。またpersistent DSAが陽性であった2例においてはABMRは発生しなかった。DMBCを評価すると、DSA陰性の2例においてはDMBCが認められた。このことから、DMBCが脱感作療法後のABMRのDSAとは独立した予測因子になる可能性が示唆された。しかし、DSA陽性、DMBC陽性であってもABMRが発生しない症例もあり、さらなる検討と長期の経過観察が必要と考えられた。
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