研究課題/領域番号 |
20K09589
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
横山 良仁 弘前大学, 医学研究科, 教授 (90261453)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | Carbonyl reductase 1 / 卵巣癌 / エクソソーム / 遺伝子治療 |
研究実績の概要 |
Carbonyl reductase 1 (CBR1)が高発現している卵巣癌細胞から腫瘍が十分に増殖せず、逆に卵巣癌細胞内のCBR1の発現を低下させると腫瘍の発生が促進され、他の臓器への転移の頻度が増加する。本研究では、ドラッグデリバリーシステム(DDS)としてエクソソームに着目した。CBR1を過剰発現するエクソソームを作製し、エクソソームを用いて卵巣癌細胞内にCBR1 DNAを送達するための最適な条件を決定すること、エクソソームで運ばれたCBR1の発現程度による細胞増殖の違いを調べるた。 CBR1 DNA導入から48時間後までCBR1 DNAの取り込みが増加し、種々のLipofectamin/NDA比の中でLipofectamin 24μl/DNA 36μgで最も良好だった。ウエスタンブロット法により、CBR1 DNAを導入した細胞でコントロール細胞よりもCBR1の発現が増強している事を確認した。CBR1 DNA導入細胞、CBR1 si RNA導入細胞、コントロール細胞からの培養上清精製検体でCD63の発現を認めたため、エクソソームが精製されたことを確認できた。さらに、CBR1 DNA導入細胞から精製したエクソソームで、他の2種類と比較して、CBR1の発現が増強していることを確認した。CBR1 DNA導入細胞から精製したエクソソームを添加した卵巣癌細胞株の増殖は、CBR1発現を減少させたエクソソームを添加した細胞の増殖に比べて有意に抑制された。 今回のin vitro実験では、CBR1を過剰発現させたエクソソームを作成し、その投与により卵巣癌細胞の増殖を抑制することに成功した。この結果は、エクソソームが遺伝子導入の有用なツールであることを示唆しており、CBR1 DNAとエクソソームを組み合わせた遺伝子治療が進行・再発卵巣癌の治療戦略として有望であることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3つの目的のうちの1つは達成できたが、他の2つの目的、すなわちCBR1の抗腫瘍作用はアポトーシスの誘導と血管新生因子の不活化のため生じる作用が直接的なものか間接的なものか明確にするためCBR1が細胞内シグナル伝達系のどこに作用するのかメタボローム解析によって低分子の代謝産物を網羅的に解析してCBR1の作用機序を明らかにすること、卵巣癌組織中のCBR1発現量は予後と相関するのであるが、血中のCBR1 DNA量が予後と相関するのか治療効果と相関があるのかを調べ予後予測マーカーとなり得るか検討すること、この2つが今後の課題である。
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今後の研究の推進方策 |
CBR1の抗腫瘍作用はアポトーシスの誘導と血管新生因子の不活化のため生じる作用が直接的なものか間接的なものか明確にするためCBR1が細胞内シグナル伝達系のどこに作用するのかメタボローム解析によって低分子の代謝産物を網羅的に解析してCBR1の作用機序を明らかにすること、卵巣癌組織中のCBR1発現量は予後と相関するのであるが、血中のCBR1 DNA量が予後と相関するのか治療効果と相関があるのかを調べ予後予測マーカーとなり得るか検討すること、この2つの解明を目指して令和3年度、令和4年度の研究を推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
弘前大学動物実験施設の改修工事が2020年度に行われたため動物飼育数が制限されたことが要因である。その間in vitroの実験を施行する時間を増やし、Carbonyl reductase 1 DNAとエクソソームを結合させる至適条件が確立できた。その条件でもって2021年度は動物実験を増やし卵巣癌腹膜播種へのCarbonyl reductase 1 DNAとエクソソームの効果を確認する予定である。したがって2020年分の動物購入数を2021年度に繰り越すため研究費増となる予定である。
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