研究課題/領域番号 |
20K09591
|
研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
佐藤 直樹 秋田大学, 医学系研究科, 准教授 (40447199)
|
研究分担者 |
菅原 多恵 秋田大学, 医学部附属病院, 医員 (40566163)
金子 恵菜実 秋田大学, 医学部附属病院, 医員 (70838713)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 遺伝性子宮体癌 / リンチ症候群 / スクリーニング / 遺伝学的検査 / サーベイランス |
研究実績の概要 |
新規対象者(本学附属病院で診療した子宮体癌患者とその血縁者)には事前の説明と同意の後にリンチ症候群(LS)の可能性を評価する分子遺伝学的解析を実施した。対象例の増加を踏まえて、独自の臨床基準を用いた選択的スクリーニングと他の戦略とを再比較し、病理学的所見の項目を加えて費用対効果の検証を深めた。マイクロサテライト不安定性検査の有用性と2抗体式免疫組織化学の優越性についても臨床的な検証を進めた。「遺伝子パネル」解析を利用した遺伝学的検査は十分な説明の機会と信頼関係の構築を要するため現状での累積は困難であり、副次目的とする関連遺伝性疾患の探索は推進の途上にある。免疫チェックポイント阻害薬の適応に係る分子学的検査の有用性を検証し、原著論文として医学専門雑誌に投稿中である。変異遺伝子、変異部位・様式、発症年齢、家系・地域性を含む環境因子など、各関連癌の発生リスク因子を分析し、LS保因女性に対する予防的リスク低減医療の有益性、適応時機について考察を重ねている。LS病原変異が検出されない分子学的LS疑い例や意義不明の遺伝子変異保持者において、潜在疾患の探索と病原性確認を追加した。血縁保因者における予防的医療管理の妥当性検証や、サーベイランスと予防的医療を含む管理指針の考案は次年度以降の繰り越し計画とした。研究の結果と最新知見や臨床情報に照らした分析により、子宮体癌におけるLS識別法を最適化し、実用的な管理指針の構築を目指している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
遺伝学的検査の実施に際しては十分な事前説明の機会と対象者との信頼関係構築が不可欠である。新型コロナウイルスの感染症とその拡大防止に関わる臨床業務が増大し、癌患者や血縁者との接見が制約されている現状において、研究を目的とした遺伝学的評価の累積は至難である。この律速要素を前提とする「関連遺伝性疾患の探索」、「予防医療の妥当性検証」、「管理指針の考案」については停滞を余儀なくされている。遺伝学的検査を必要としない「蓄積された臨床データの分析」と「分子学的検査の有用性検証」に焦点を絞り統計解析した研究成果は、原著論文として専門医学雑誌に投稿中である。
|
今後の研究の推進方策 |
対象例の累積、臨床データの蓄積、分子学的解析は当該年度と同様に継続する。遺伝学的検査の通常再開を待機しつつ、スクリーニング分野に関する考察・分析・成果発表を重ねる。対象者との接見制約が長期化する場合には、(個人情報保護を技術的に確保した上で)オンラインでの遠隔説明と同意手続きのシステムを導入する。遺伝学的検査までの道程が整えば、当初計画に沿った研究を加速推進する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
助成金の主たる使途としていた遺伝学的解析の大半は中断・延期を余儀なくされている。関連学会への現地参加も見合わせている。よって、当該年度中において助成金の活用機会は厳に限られていた。医療および研究環境の回復を待機し、次年度使用額として計上する。
|