研究実績の概要 |
多機能性の増殖因子であるアクチビンは、炎症性疾患で増加することが知られており、絨毛膜羊膜炎や子宮内感染症においても、羊水中で高値となることが報告されている。しかし、アクチビンが胎児-胎盤系に対してどのような影響を及ぼしているかについては明らかになっていない。このため、本研究では羊水中にアクチビンを注入し、アクチビンが胎児-胎盤系に及ぼす影響を解析している。 これまでのJcL:ICRマウスを用いた研究で、アクチビン注入後に得た胎仔肺から抽出したRNAの質が、NGS解析に供せるレベルであることを、RNA Integrity Number解析により確認している。このため、肺発育段階管状期の胎生16.5日の羊水中にアクチビンを注入し、胎生18.5日に採取した胎仔肺と、肺発育段階終末嚢期の胎生17.5日の羊水中にアクチビンを注入し、同じく胎生18.5日に採取した胎仔肺のcDNAを本年度も用いて解析した。胎生17.5日アクチビン注入、18.5日採材群の胎仔肺のDNA arrayによる解析で、注入群と対照群で、発現量に相違のある遺伝子が検出されていたため、独立した3群の実験で、RT-qPCRによりこの遺伝子の発現量を解析した。この結果、2群において有意な差を検出した。現在、免疫組織学的検査による蛋白質レベルでの解析を準備している。 また、将来的な胎児治療を見据え、Drug Delivery Systemで汎用されるliposomeの羊水中における安定性を血清中と比較した。その結果、両者間に有意な差はみられないことを見出した(Ogawa N, Hirayama N, Abe Y. Liposomal Particle Kinetics in Mouse Amniotic Fluid. 投稿中)。
|