研究課題/領域番号 |
20K09594
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
佐藤 憲子 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 准教授 (70280956)
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研究分担者 |
宮坂 尚幸 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (70313252)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | DOHaD / 低出生体重児 / 高血圧 / 子宮内環境 / 胎盤 / ゲノム / 妊娠中体重増加量 / 栄養プロファイリング |
研究実績の概要 |
低出生体重児が、心血管疾患、高血圧、2型糖尿病などの生活習慣病を発症するリスクが高い機序について、従来対峙する2つの考え方が議論されてきた。1つは「不良な子宮内環境が、胎児の成長過程を乱し、出生体重を低下させ、さらに疾患発症の素因も形成させてしまう」というDOHaD仮説であり、母親の低栄養、ストレス、喫煙などが、子宮内環境を悪化させる原因と考えられている。もう1つは、「出生体重低下と疾患発症は、子宮内環境には関係がなく、共通の遺伝要因によってプログラムされている」というものである。 本邦は世界的にも低出生体重児の割合が高く、今後の生活習慣病発症率の増加が懸念されている。特に若い女性の痩せの割合が多いため、DOHaD仮説に基づき、児の疾患予防のために妊娠前・妊娠期の母親の体重を増やすことに関心が払われている。しかし、母児のゲノムや個性、胎児の成長過程の分析や、妊婦の食事の質の包括的な評価といった重要な解析はまだ十分になされていない。 本研究は、DOHaD仮説か遺伝要因かという議論ではなく、それらを包括的に評価し、母児の健康向上に役立つ有用な知見を提示することを目的としている。また妊婦の体重管理だけでなく、妊婦の食事の質をスコア化して栄養そのものの管理が行えるように、栄養プロファイリング手法の適用を可能にすることを目的としている。 本年度は、昨年度に発見した母の遺伝的高血圧リスクと出生体重との関係が胎盤によって媒介されることを、Causal Mediation Analysis法を用いてより明確に示し、その成果を論文発表した。この成果は、子宮内環境と遺伝要因の両方を評価することの重要性を示している。また、Nutrient-Rich Food Indexという栄養プロファイリングの一手法を適用して妊婦の食事の質を初めて評価し、妊婦の栄養管理法改善に向けての第一段階の成果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、母児ゲノムを用いて、SNP群で特徴付けられる疾患経路と児の成長との関係について、他施設との共同研究が可能となったが、一部データがまだ取得できない状態にある。周産期登録データベースを用いた解析も順調に進んでいる。栄養プロファイリングに関する研究も順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
遺伝統計解析研究については、他施設との共同研究によって、研究内容を発展させる。 周産期登録データベースを用いた解析結果を論文等で発表する。 妊婦の食事の質と妊婦体重増加量、出生体重との関係の解析結果を発表し、日本人妊婦の健康管理方法を改善させる一助に役立てる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度において、本研究に必要な多施設共同研究の実施等の倫理審査委員会の承認は得られたが、解析対象のデータの入手の見通しがたたず、研究全体を通じて研究費使用の内訳を慎重に考慮する必要があった”次年度使用額”となった分を含めて、研究全体を通じて、最も有効に研究費を使 用するよう計画している。
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備考 |
佐藤憲子「遺伝子と栄養環境の影響を理解して子々孫々の健康を守る」 文京区市民公開講座 ―最先端生命科学講座シリーズ 第29回、2021年10月22日
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