研究課題/領域番号 |
20K09595
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
西島 浩二 新潟大学, 医歯学総合病院, 教授 (80334837)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 肺サーファクタント / 胎脂 / ミセル / 早産 / 壊死性腸炎 |
研究実績の概要 |
羊水中に存在する肺サーファクタントと胎脂の体内動態を検討するために、妊娠16週から40週の羊水55検体中のミセル分子の超微細構造を、電子顕微鏡を用いて観察した(妊娠16~20週:11検体、妊娠21~25週:6検体、妊娠26~30週:6検体、妊娠31~35週:6検体、妊娠36~40週:26検体)。ミセル形成の有無は、各標本を風乾させた後にネガティブ染色を施し、透過型電子顕微鏡(H-7650; 日立ハイテクノロジーズ)を用いて観察し、評価した。妊娠30週から40週の羊水35検体中26検体からミセル分子を検出することが出来た(検出率74.3%)。妊娠週数が進むほどミセルの検出率が高くなったことから、ヒト羊水中のミセル分子は胎児の肺成熟度の指標になり得ると思われた。また、ミセル分子の存在は多くの症例で全身の成熟度とも相関していた。一方、妊娠36週以降の検体でも検出率が80.8%にとどまっていたが、これは本観察法の限界を表していると思われた。 次に肺サーファクタントが形成するミセルに関して、更なる情報を得ることを目的に、生理食塩水に懸濁した肺サーファクタント製剤(サーファクテン; 田辺三菱製薬)を-175℃まで急速凍結した後、クライオ透過型電子顕微鏡(JEM-2200FS; 日本電子)を用いて観察した。JEM-2200FSは理論上直径0.2 nm程度の粒子を検出できる分解能を持つ。本観察では、親水基を外側、親油基を内側に向けたミセル分子の構造を明らかにすることが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
肺サーファクタントと胎脂の体内動態を検討するために、肺サーファクタントが形成するミセル分子の超微細構造を電子顕微鏡を用いて観察した。コロナ禍の影響を受けて研究計画を変更せざるを得なかったが、修正した研究計画通りに実施することが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
研究実施計画書に従い、サーファクテンミセル溶液による壊死性腸炎予防効果のメカニズムを検討する。Guvenらの手法に倣い、ラット新生仔に負荷を加えて壊死性腸炎モデルを作成する。80匹のラット新生仔を出生直後に4群に振り分ける: NEC群(壊死性腸炎群); NEC+STA群(サーファクテンミセル溶液を投与した後に、壊死性腸炎負荷を加える群); control群(母ラットの授乳を自由に受ける群); control+STA群(母ラットの授乳を自由に受けながら、サーファクテンミセル溶液を1日3回投与する群)である。実験開始4日目に、4群全ての新生仔を安楽死させ、壊死性腸炎の肉眼的所見の有無を観察する。次に小腸を摘出し、組織学的検討と生化学的検討を行う。
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