研究課題/領域番号 |
20K09601
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
末岡 幸太郎 山口大学, 医学部附属病院, 准教授 (40452643)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | Carbonyl reductase 1 / 有機シリカ・ナノ粒子キャリア / 子宮頸癌 |
研究実績の概要 |
我々はこれまでに子宮頸癌と子宮体癌患者において carbonyl reductase 1(CBR1)の発現低下は有意に予後不良であることを報告している。また子宮頸癌細胞へ CBR1 発現ベクターを導入し、CBR1 を過剰発現させると腫瘍形成を抑制できる事実を in vivo 実験ですでに証明しており、このCBR1を子宮頸癌に遺伝子導入できれば、革新的な治療法となると考えている。一方で研究協力者である山口大学の中村教授が新たな遺伝子治療用キャリアとして、従来のナノ粒子と比較し、多機能性、安定性、安全性に優れた有機シリカ・ナノ粒子キャリア(OS/TNC)を開発しており、この OS/TNC を用いることで効率よく CBR1 を腫瘍組織に集積することを考えた。 本研究では CRB1 遺伝子治療ナノ粒子キャリア(CBR1-OS/TNC)を作製し、その機能解析を in vitro および in vivo で行うことを第一の目的としている。 現在まで蛍光色素(ローダミンB)を内包させた 様々なサイズ(1.3kDa~750kDa)でコートした 12種類のOS/TNC を作成した。これを子宮体癌細胞株であるSNGMに導入し、OS/TNC のがん細胞への取込(ローダミンB を指標とした蛍光観察)の条件設定ならびに効率、継代後の発現変化について検討した。 まず導入遺伝子の発現をモニタリングするため、CBR1と同時に GFPを発現する発現ベクターを共導入し、導入の条件検討を行った。 その結果、OS/TNC はがん細胞に高率に導入され、継代後も維持されることがわかった。しかし、CRB1の発現に関して、ローダミンB を指標とした蛍光観察を行ったが、発現はほとんど見られなかった。RT-PCR法にてベクターの導入は確認できており、導入された発現ベクターからの転写がほとんど生じていない可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
有機シリカ・ナノ粒子キャリアを利用して、標的遺伝子を細胞に導入できれば、細胞質内から核内へ移行して、蛋白合成まで至ることを想定していたが、実際には転写が起きない状況である。原因として、OS/TNCの細胞質への移行、あるいは発現ベクターの核内移行が生じていない、あるいは発現ベクターが OS/TNC から乖離しない可能性が考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
まずは発現ベクターが OS/TNC から乖離しない可能性を考えて、OS/TNCと標的遺伝子とを結合させる方法を変更してみる。 また、OS/TNCの導入方法がより効率的に行われるように、導入条件を様々に検討していく。 これを確立できれば、実際のCBR1の発現の確認を行うと共に、効率化を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は遺伝子導入が成功し、in vivo実験に向けた条件設定などの実験を予定していたが、進捗状況が芳しくないため、未使用額が大きくなった。 次年度はヌードマウスを用いたin vivo実験まで行いたいと考えている。
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