研究課題/領域番号 |
20K09602
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
甲斐 健太郎 大分大学, 医学部, 助教 (90457622)
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研究分担者 |
奈須 家栄 大分大学, 医学部, 教授 (30274757)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 子宮内膜症 / マイクロRNA / 細胞増殖 / 細胞死 / 細胞遊走能 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、miR-132が子宮内膜症の病態形成に関与するか、また、将来的な治療標的となるか、を探索することである。 2020年度は発現解析とパスウェイ解析を行った。その結果、miR-132は、正常子宮内膜間質細胞と比較して、子宮内膜症間質細胞で発現が亢進していた。また、miR-132を強制発現させた正常子宮内膜間質細胞(正常細胞に内膜症形質を導入)と非導入群との比較マイクロアレイで得られたデータを用いたパスウェイ解析では、p53 SignalingとCell Death and Survival、Cellular Movementが候補パスウェイとして抽出された。 2021年度はmiR-132の強制発現モデルを用いて、miR-132の下流の標的分子(Akt1およびMDM2、MMP1)の転写(mRNA)・翻訳(蛋白)レベルでの発現変化を検証した。その結果、Akt1のmRNA発現は低下したが、蛋白発現は亢進した。一方、MDM2とMMP1はmRNAレベル、蛋白レベルでいずれも発現が亢進した。この結果については、下記【現在までの進捗状況】で解説する。 2022年度は、miR-132を強制発現した正常子宮内膜間質細胞を用いて、機能解析した。miR-132の強制発現によって、細胞増殖・細胞遊走能は亢進し、細胞死耐性は低下した(miR-132の強制発現によって、正常子宮内膜間質細胞が子宮内膜症的形質を獲得したと解釈できる)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
一般的に、マイクロRNAはその標的となるmRNAの末端に結合し、転写を阻害する(一部蛋白への翻訳阻害作用もある)。そのため、理論的には、下流標的分子のmRNAおよび蛋白の発現はいずれも低下するはずである。しかし、本研究では、miR-132の強制発現によって、下流の標的分子のmRNAは、Akt1は低下し、MDM2およびMMP1は亢進した。蛋白発現に至っては、3つとも亢進した。この相反する結果の解釈が、昨年に引き続き課題である。また、オルガノイドの開発も、コロナ禍で研究協力者であるミシガン州立大学の研究室の活動が制限されており、遅延している。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、Loss of function実験を進める。すなわち、Akt1およびMDM2、MMP1阻害薬を、miR-132を強制発現した正常子宮内膜間質細胞に添加し、獲得した形質に影響を及ぼすかどうかを検証する。また、miR-132研究が、予定通り進まない場合に備え(標的分子の発現状況に一貫性がなく、実験仮説と整合性が取れない点)、他のmiRによる研究を並行して進める。候補となるのは過去に、本研究室で研究していたmiR-210で、miR-132とともにマイクロアレイ解析で12分子のうちの一つである。本分子を対象に以前は行わなかった、ヒトとヒヒの内膜症検体を用いた研究を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍と主任教授退官後の研究環境の再整備のため、研究の活動性が低下した。また、新規試薬購入を控え、既存の試薬類で研究を行ったため、支出がなかった。しかし、2023年度から新教授が着任し、いままでの遅延を取り返すべく、活発な研究を進める予定である。ミシガン州室大学の研究室とも定期的に連絡を取っており、研究成果の公表に向け、主研究(miR-132)とバックアップ研究(miR-210)の両者を進める。具体的には、以下を予定している。①ヒヒ子宮内膜症サンプルにおける、標的分子のRNAおよび蛋白レベルでの発現解析、②ヒト子宮内膜症サンプルにおける、標的分子のRNAおよび蛋白レベルでの発現解析、③ヒヒおよびヒト子宮内膜症サンプルにおける、標的分子の局在解析、④標的分子の局在に基づいたin vitroモデル(培養細胞)の決定、⑤in vitroモデルを用いた機能解析
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