1.質量分析法でHPVと結合する細胞因子を網羅的に同定、解析 本研究期間中、タグ付きHPV遺伝子産物を細胞に導入し、免疫沈降法で網羅的な質量解析によって、AIFはHPVとの結合細胞因子であることを見い出した。質量分析では、HPV E6の結合細胞ペプチドにAIFのペプチドが高く検出された。更なるin vitroで検討すると、高リスクHPV E6だけはAIFのFDAドメンと細胞質で結合し、更にカスパーゼ非依存性経路ではAIFの分解によって、クロマチンの分解を抑制し、HPV感染細胞を癌化させることを明らかにした。しかし、低リスクHPV E6はAIFと結合するが、AIFの分解およびクロマチンの分解抑制は認められなかった。それらの結果によって、AIF経由の新たなHPV発がん経路を見つけた。HPV感染及び治療に貢献し、その成果は査読科学雑誌で発表された。 2.HPVの感染過程の解明およびCRISPR/Cas9ゲノム編集技術の応用 全ヒトゲノムに対するsgRNAライブラリを発現するレンチウイルスを作製した。そのウイルスを293T細胞に感染させ単独遺伝子欠損細胞ライブラリの作製に成功した。それら細胞にHPV粒子を感染し、次世代シーケンサーで遺伝子解析によるHPV細胞感染に必須な遺伝子を同定した。またHPV-BP1蛋白はHPVの細胞受容体候補であることが同定できた。HPV-BP1は細胞表面に発現し、HPV粒子と結合することが免疫染色で確認できた。更にHPV-BP1欠損細胞にHPV粒子が感染阻害したことを確認した。またHPV-BP1はHPVの受容体であることを明らかにした。現在、そのHPV-BP1を標的としてワクチンを開発している。
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