研究課題/領域番号 |
20K09604
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
木村 麻衣 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (30812333)
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研究分担者 |
吉元 千陽 奈良県立医科大学, 医学部, 研究員 (00526725)
小林 浩 奈良県立医科大学, 医学部, 研究員 (40178330)
川口 龍二 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (50382289)
河原 直紀 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (70623495)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | HNF-1beta / 卵巣明細胞癌 / GSK-3beta |
研究実績の概要 |
HNF-1beta過剰発現が細胞代謝に与える影響を詳細に評価するために、384種類の阻害薬を用いた阻害薬スクリーニングを行った。細胞株はHNF-1beta過剰発現株であるTOV-21GとHNF-1beta発現を呈していないES2を用い、阻害薬添加後48時間目にMTSアッセイを用いて細胞増殖度を評価した。コントロールとして阻害薬の溶媒である同量のメタノールを添加した。阻害薬候補としては、HNF-1beta過剰発現株であるTOV-21Gには細胞増殖抑制能をもち、且つHNF-1beta発現を呈していないES2の増殖は抑制しない、あるいは助長するものを抽出した。その結果、HNF-1beta高発現の細胞株特異的に作用する阻害薬Xを同定した。HNF-1betaの干渉下に阻害薬Xを加えると著明に細胞増殖が低下した。HNF-1betaの下流にGSK-3betaが位置していることを以前報告しており、TOV-21Gに対し、GSK-3betaを干渉した後、阻害薬Xを投与したところ、有意に細胞増殖抑制効果を認めた。通常、癌細胞のエネルギー産生経路はWarburg効果により解糖系優位である。GSK-3betaはwarburg効果に関与し、その阻害によってエネルギー産生経路は解糖系から酸化的リン酸化にシフトするとされる。阻害薬XによってMitophagyが生じ、酸化的リン酸化阻害されて癌細胞のエネルギー産生が不十分となる可能性を考える。 細胞代謝に着目した癌治療は、現在難治性とされている卵巣明細胞癌に対する有効な治療の可能性がある。GSK-3beta、HNF-1betaはその治療戦略において、治療標的の中心である可能性があり、引き続き研究を進めていく。
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