研究課題/領域番号 |
20K09605
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
西辻 和親 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (40532768)
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研究分担者 |
池崎 みどり 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (40549747)
岩橋 尚幸 和歌山県立医科大学, 医学部, 博士研究員 (50750907)
井箟 一彦 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (60303640)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 妊娠高血圧腎症 / アルツハイマー病 / アミロイドーシス / Aβ |
研究実績の概要 |
産科領域における代表的疾患である妊娠高血圧症候群の発症頻度は全妊婦の7~10%である。その一病型である妊娠高血圧腎症 (PE) は高血圧・蛋白尿・浮腫を主徴とする妊娠合併症であり、母児の予後に大きく影響する。PEの確実な治療は妊娠の終了であるため、治療法の開発が急務である。PEと胎盤形成不全は密接に関連するため、新たな視点からの胎盤形成の分子機構の解明が必須である。近年、PEがタンパク質凝集病としての側面を持ち得ることが示唆されているが、その胎盤における病態的意義は解明されていない。当該年度はコロナウイルス感染症の蔓延によりイレギュラーな研究環境となり、効率的に研究を遂行するためにヒト検体の解析に専念した。ヒト胎盤組織検体の解析から胎盤におけるアミロイドβ(Aβ)沈着物の存在を確認した。現在のところ25症例の解析が終了しており、最重症であるPEおよびFGR合併群の8/8例 (100%) 、PE単独群の4/4例 (100%) 、FGR単独群の4/6例 (66.7%) 、正常妊娠群の2/7例 (66.7%) でAβが陽性となり、胎盤形成不全の病態とAβ発現が関連する可能性が強く示唆された。さらに、PE胎盤におけるAβ沈着物にはほぼ全てアミロイドーシスにおける共通の非タンパク質性成分ヘパラン硫酸糖鎖が含まれていることも分かり、PEが胎盤Aβアミロイドーシスであることが強く支持された。PE発症にはいくつか危険因子があることが分かっているが、その内、アルツハイマー病の発症にも関与すると報告されているものについて、ヒト検体を用いた解析を行った。その結果、アルツハイマー病に関与する複数の因子がPE発症にも関与する可能性が示唆された。次年度はこれらの結果を踏まえてin vitroの解析を行い、分子メカニズムの解明を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
先にも述べたように、当該年度はコロナウイルス感染症の蔓延によりイレギュラーな研究環境となった。そのため、ヒト検体の解析とin vitroの分子メカニズム解明を同時に行うことが困難と考え、ヒト検体の解析に集中した。当初予定のヒト検体の解析は順調に遂行でき、PE患者胎盤においてAβが沈着していること、全てアミロイドーシスに共通する非タンパク質性成分である硫酸化糖鎖が胎盤Aβ沈着物の構成成分であることが分かり、PEが胎盤Aβアミロイドーシスであることが強く示唆された。これは当初目的の一つである限局性アミロイドーシスとしてのPE病態概念の提唱に繋がると考えられる。また、当該年度ではin vitroの実験計画を変更し、さらにヒト検体の解析を続けた。その結果、複数のPE発症の危険因子について新たな分子機構解明のための足場となる知見を得ることができた。これらを合わせ、おおむね順調に進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に行う予定であったヒト胎盤絨毛モデル細胞としてBeWo細胞とHTR8/SVneo細胞を用いた細胞機能評価を行う。細胞機能評価は、細胞性栄養膜細胞モデルBeWo細胞についてはシンシチウム化、絨毛膜外栄養膜細胞モデルHTR8/SVneo細胞については浸潤能を基に行う。これらに加え、前年度のヒト検体の解析により発見したPEの危険因子について、上記細胞を用いてどのように危険因子としてPE発症やPE病態に関与するのか、解明を行う。なお、これらについては今年度と次年度の2年間で行う予定である。また、ヒト胎盤組織を用いた生化学的・病理組織学的解析についても、前年度の結果を踏まえたものとさらに症例数を増やしたものの2つを計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
状況:生化学実験用試薬、免疫組織化学用試薬、抗体等の購入に際し、できる限りキャンペーンを利用するなどして節約に努めたため、当初予定金額より支出が抑えられた。また、コロナウィルス感染症の蔓延により研究環境が変化し、当初計画を変更して行ったため、次年度使用額が生じた。コロナウイルス感染症の蔓延により予定していた国内学会、国際学会への参加を取りやめ、さらに研究打合せも自粛したため、予定していた旅費の支出も抑えられた。 使用計画:前年度の結果を踏まえ、ヒト検体の免疫組織化学的、あるいは生化学的解析を継続する。このための試薬の購入に充てる。また、本年度は前年度行う予定であったヒト胎盤絨毛モデル細胞を用いた解析を行う。そのため、これら細胞株および生化学実験用試薬の購入にも充てる予定である。従って生じた次年度使用額の大部分はin vitro実験の遂行に必須である。コロナウイルス感染症の状況次第で国内外の学会での成果発表も積極的に行う。
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