研究課題
胎児超音波画像診断の進歩により、Nucal Translicency(NT)とDown症候群などの胎児染色体の数的疾患との関連が近年注目されてきている。しかしその一方で、従来型のNT計測は精度管理が難しいため一般的検査になりにくく、また精度の低い測定による社会的な混乱も発生している。本来3D構造物である胎児後頸部透亮域を、厚み計測という二次元的測定値(2D)では、胎児の位置、 測定者の技量などにより測定の精度が大きく左右されてしまっている。以上の観点から、我々は本来三次元的な構造である胎児後頸部透亮域をその まま体積(3D)で測定を行う方が、胎児の位置に左右されず測定値の客観性も保たれ、胎児の遺伝学的画像検査としての有用性がより高まると考えた。本研究の目的は、胎児の位置や測定者の技量などで、評価基準を満たすことに苦慮していたNuchal translucency(NT)測定・評価に対して、三次元的構造物である胎児後頸 部透亮域を経腹あるいは経腟3D測定法(以後NV)で測定することで、胎児の位置および測定者の技量に関わらず安定した測定と客観的評価が可能となる測定方法の確立を目指すものであった。しかしながら2019年より発生した新型コロナ感染症による社会的な制約のため、当初予定してた症例数の確保は達成出来ず、研究期間の終了を迎えることになった。これまでに実施出来た内容は以下の通りである。測定件数8件。母体平均年齢 34.5歳。平均妊娠週数 13週5日。平均NT値 4.0mmであった。8例中2例(全てNT 3.5mm以上)において21 trisomyを確認。8例中5例(全てNT 3.5mm未満)は正常核型であることを確認、1例は測定時においてNT肥厚確認できず、正常であると判断。以上である。