妊娠高血圧症候群は、妊娠中に高血圧を認めたものと定義され、全妊娠の5~10%と高頻度に発症するが、今だに根本的治療は妊娠の終了、つまり分娩のみである。しかし、この状況では既に罹患し、母児の生命にさらされてるだけでなく、早産期に児の娩出を行った場合に、児の未熟性の問題や、NICU含め医療資源の面からも患者、医療現場、社会にとって、負担となる。そのため、妊娠高血圧症候群は予防がカギとなるが、現在広く用いられている低用量アスピリンによる予防効果もかなり限定的であり、さらなる予防方法が必要であると考えられる。我々は本来は妊娠高血圧症候群の予防薬として抗コレステロール血症治療薬であるスタチンに注目をして研究してきた。本研究ではスタチンの中でもプラバスタチンを妊娠高血圧症候群の予防のために用いる際に、容量、投与期間などに関する基礎実験を行うことを目的とした。プラバスタチンの臨床応用に向けた基礎実験として、ヒト胎盤から採取したcytotrophoblast、また絨毛細胞由来細胞株を用いてプラバスタチン濃度による抗妊娠高血圧症候群の効果を精査した。その結果、低濃度でも妊娠高血圧症候群発症に関連の深いsFlt-1産生及び上清中のタンパク濃度を減らすことを解明した。これはプラバスタチンを人への臨床に用いる際に低用量を試みる根拠となるデータとなり得る。投与期間に関しては細胞実験だけでなく、動物実験による観察が必要となると考えられ、さらなる研究が必要である。
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