研究課題/領域番号 |
20K09615
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
中村 智子 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (40732681)
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研究分担者 |
岩瀬 明 群馬大学, 大学院医学系研究科, 教授 (20362246)
後藤 真紀 名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (90378125) [辞退]
大須賀 智子 名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (30778296)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 子宮内膜症 / 卵胞発育 / 炎症 / 線維化 / 酸化ストレス |
研究実績の概要 |
子宮内膜症は、不妊症の主要因子の一つである。しかし、現存の子宮内膜症治療薬は排卵を抑制するため、不妊症治療と内膜症治療は同時並行することはできず、子宮内膜症合併不妊症を有する女性は子宮内膜症治療か不妊治療の二者一択を迫られる。子宮内膜症女性においては排卵数や卵質の低下が報告されており、これは子宮内膜症の主病態である慢性炎症と線維化が正常な卵胞発育を障害する結果と考えられるが、その詳細は解明されていない。本研究では、子宮内膜症による卵胞発育障害の機序を解明し、排卵抑制を来たさない新規子宮内膜症治療薬の開発を目的としている。 本年度はまず、細胞老化に着目した研究を行った。子宮内膜症では酸化ストレスが生じ、酸化ストレスは細胞老化を惹起することが報告されている。老化細胞は炎症性サイトカインを分泌し慢性炎症に寄与する。子宮内膜症間質細胞が老化細胞の性質を有する可能性があることに着目し、その評価と子宮内膜症治療への応用を検討した。 また、子宮内膜症の病変の進展にIL-1βの関与が報告されているが、その活性化に必要なインフラマソームのうちNLRP3に着目し検討した。異所性子宮内膜においてNLRP3の発現は増加しており、NLRP3阻害剤の使用により子宮内膜症細胞の増殖能が抑制された。非ホルモン性の薬物療法としてNLRP3阻害剤は有用であると考えられ論文報告した。 さらに、昨年度論文報告した卵巣子宮内膜症モデルマウスを用いて、卵巣子宮内膜症性嚢胞を有する卵巣における卵胞発育につき、線維化と炎症の観点から検討を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度論文報告した卵巣子宮内膜症モデルマウスを用いて、卵巣子宮内膜症性嚢胞を有する卵巣検体を安定して作成できており、これにより本年度は卵胞発育障害の原因の検討を進めることができた。また、排卵抑制を来たさない非ホルモン性の子宮内膜症薬物療法の一つとして、NLRP3阻害剤の有用性について論文報告できた。さらに、子宮内膜症間質細胞が老化細胞の性質を持つことを示し、老化除去剤が新たな、非ホルモン性の子宮内膜症治療薬となる可能性を検討している。子宮内膜症による卵胞発育障害の機序を解明し、排卵抑制を来たさない新規子宮内膜症治療薬の開発を目的において、概ね計画通りに順調に進んでいると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ感染流行の為、研究活動が制限され卵巣子宮内膜症モデルマウスの作製に遅れが生じたが、現在は作製を再開できている。卵巣子宮内膜症モデルマウスの免疫染色等を用いて、正常卵巣と比較した、卵胞発育段階ごと及び卵巣内構造ごとの変異を見出す。特に、卵の発育に最も関与すると考えられる顆粒膜細胞において卵巣子宮内膜症に伴う変異が見いだされた場合は、マウス卵胞を穿刺することにより顆粒膜細胞を集積しmRNAやタンパクを回収し検討する。また、老化細胞の性質に関する検討では、効果的な老化除去剤の選抜とその有用性を、細胞実験及び子宮内膜症モデルマウスを用いた実験により評価していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染流行により、研究活動が制限されたため次年度使用額が生じた。当該年度において予定していた、内膜症モデルマウスの作製を進め、卵巣組織における免疫組織染色を次年度に行う。マウスの購入と、免疫組織染色に必要な抗体の購入に使用する予定である。
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