研究課題/領域番号 |
20K09619
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
出口 雅士 神戸大学, 医学研究科, 特命教授 (50403291)
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研究分担者 |
山田 秀人 神戸大学, 医学研究科, 非常勤講師 (40220397)
谷村 憲司 神戸大学, 医学部附属病院, 准教授 (80593988)
笹川 勇樹 神戸大学, 医学部附属病院, 助教 (40815304)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | プロテインS / 不育症 / 産科異常 |
研究実績の概要 |
全妊婦対象の前向きコホート研究については、妊娠8-12週の当院妊婦外来に通院中の母体を対象に遊離プロテインS抗原量と活性、Dダイマー、可溶性フィブリンモノマー、総 プロテインS抗原量な らびに活性と比活性を測定している。本年度の測定例数は331例と、順調に症例を集積している。プロテインC系全体の活性を測定する検査キットであるThrombopasについては、販売が終了となったため、現在確保している検査キットがなくなれば測定を終了することとなる。結果に基づく介入なく通常の妊娠経過観察を行っており、特に有害事象の発生なく経過している。産科異常の発生状況との関連を調べるため、臨床情報の収集についても並行して行っている。総プロテインS比活性の低下を認めた症例では本人の同意が得られれば、既知のプロテインS遺伝子異常を解析する予定であるが、今のところプロテインS遺伝子異常を解析の同意が得られた症例はない。 妊娠による検査値変動についての研究についても、合併症のない妊婦28例の妊婦で上と同様の検査項目を妊娠10週、18週、28週、36週 (±2週) で測定した。産褥1ヶ月での測定は、臨床上の採血の機会がなく実施できていない。 当院不育外来に通院中の患者および抗リン脂質抗体が陽性と診断されている妊婦31例についても上と同様の検査項目を測定し、結果に基づく介入なく通常の妊娠経過観察を開始行っている。こちらも臨床情報の収集を並行して行っている。 抗プロテインS自己抗体と妊娠予後の関連の解析については、プロテインSの抗体測定系の確立を行っているところである。ドットブロットでPVDF膜に滴下するプロテインSの濃度(量)ならびに反応させるプロテインS低下女性の精製IgGの濃度(量)条件設定を行っており、その条件設定をもとにスロットブロットに移行する予定にしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
全妊婦対象の前向きコホート研究については目標症例数の350例に対し331例の測定を行っており、ほぼ順調に症例を集積できている。今後、里帰り先医療機関での妊娠経過と分娩情報の診療情報提供を得て脱落例を少なくすることで、研究期間内に目的の症例数は確保できると考えている。総プロテインS比活性の低下を認めた症例でのプロテインS遺伝子異常の解析(プロテインS徳島の検討)は本研究での副次解析項目であるが、現時点では同意を得た症例はなく、引き続き症例のリクルートを行う。 妊娠による検査値変動についての研究についても、既に合併症のない妊婦28例の妊婦で妊娠10週、18週、28週、36週 (±2週) で測定した。産褥1ヶ月での測定は、臨床上の採血の機会がなく実施できない場合が多いが、妊娠中の採血は順調に症例を確保しており、期間内に予定数を集積し妊娠各期のプロテインS基準値の設定は可能であると考えている。 当院不育外来に通院中の患者および抗リン脂質抗体が陽性と診断されている妊婦も順調に症例を蓄積している。 抗プロテインS自己抗体と妊娠予後の関連の解析については、イムノブロットによる定性検査の条件設定を行っている最中でこれについては計画より遅れはあるが、症例の集積が順調に進んでおり、概ね順調に進展していると考える。。
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今後の研究の推進方策 |
全妊婦対象の前向きコホート研究については、分娩数の多い一次分娩施設での検体収集も考慮したが、凝固検査は採血手技、検体管理が不適切になると大きく値が変動しうるため、引き続き検査技師が検査部で中央採血する当院での検体採取のみとする。症例数については、里帰り例などで情報が欠損することをできるだけ回避するため、里帰り左記医療機関にその後の妊娠経過、分娩情報について情報提供を求め、採血例の臨床情報をできるだけもれなく集めて脱落例を少なくするようにする。プロテインC系全体の活性を測定する検査キットであるThrombopasについては、販売が終了となったため、現在確保している検査キットがなくなれば測定を終了せざるを得ない。総プロテインS比活性の低下を認めた症例では引き続き、プロテインS遺伝子異常についての解析を依頼する。プロテインS遺伝子解析は保険診療でも可能となっているため、院内での保険診療としての実施体制を整えていく。 妊娠による検査値変動についての研究については、引き続き自院の症例で検査をすすめる。コロナ禍でさらなる妊娠分娩の現症がなければ50例以上の妊娠10週、18週、28週、36週 (±2週) の測定は可能と考えている。対象患者が産褥1ヶ月で臨床上の採血が必要となれば産褥1ヶ月での採血を行う予定である。 当院不育外来に通院中の患者および抗リン脂質抗体が陽性と診断されている妊婦についても期間内に予定している症例数の確保は可能と考えられ、引き続き妊娠初期に採血を行っていく。 抗プロテインS自己抗体と妊娠予後の関連の解析については、引き続きPVDF膜に滴下するプロテインSの量と反応させるプロテインS低下女性の精製IgGの濃度と量の条件設定を続けつつ、スロットブロットへの移行を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
検査実施者が若干予定より少なかったため、検査キットの購入が少なくなった。検査キットについては有効期限があるため、検査数と残試薬の量をみて発注しているため、検査キット1セット分の購入が2020年度ではなく2021年度となった。次年度に購入を持ち越した分については次年度使用額を充てる。 また、検査測定機器については定期的な保守、調整が必要であり、年度末に予定していたが、新型コロナウイルスの流行に伴い保守が予定通り行えなかった。検査測定機器の保守は2021年5月中に予定しており、次年度使用額を充てる予定である。 さらに、新型コロナウイルスの流行に伴いピペットチップなどの入手が遅れることがあったため、年度内に購入(納入)できなかったものもあり、今年度に持ち越して納入となったものは、次年度使用額を充てる予定である。今年度は納品の遅れを見越して早めの発注を行っていく。
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