研究課題
本研究では減数分裂に関する遺伝子の変異を網羅的に解析することにより、未知の不妊原因を明らかにすることを目指した。体外受精反復不成功患者を対象に、減数分裂関連の遺伝子を中心とした次世代シーケンシング(NGS)による遺伝子変異の網羅的解析を行った結果、当初予想していた1)組み換えに関する遺伝子(STAG3, MSH5, MLH3)、2)コヒーシンに関連する遺伝子(REC8、SMC1B、SGO1, SGO2)、3)対合複合体に関連する遺伝子(SYCP3)に有害な遺伝子変異は本研究の対象患者においては検出されなかったが、これ以外の遺伝子のうち自然妊娠出産者10人に存在しないHigh impactな変異が57の遺伝子に存在し、これらの遺伝子のうち、ADAM33、CEP89、CRIPAK、LGALS9B、PDZRN3、RAET1E、およびSPATA31A3において、患者群と8.3KJPNデータベースの対照群間のアレル頻度に有意な差が検出された。また、完全不妊が存在しない状態でハーディワインベルグ平衡が成立すると仮定した場合、ADAM33、CEP89、MICA、OR2T29、OR52J3、RABL2A、RNF17、SPATA31C1、およびWWTR1遺伝子において対象患者における実測値とHuman Genetic Variation Database(HGVD)からの計算値に乖離が生じていることが判明し、これらの遺伝子の変異が完全不妊となる原因の候補となった。このうち、生殖細胞の形成過程に重要な役割を有するpiRNA関連遺伝子であるRNF17と胚発生過程において栄養外胚葉と内細胞塊に分化する際に重要な役割を有するHippoシグナル経路遺伝子であるWWTR1の変異は特に不妊原因となる可能性が高いと考えられ、大型データベースを利用した大規模解析による確認が必要となった。
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