研究課題/領域番号 |
20K09623
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
桃井 伸緒 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (10285033)
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研究分担者 |
郷 勇人 福島県立医科大学, 医学部, 講師 (30443857)
青柳 良倫 福島県立医科大学, 医学部, 助手 (30509469)
金井 祐二 福島県立医科大学, 医学部, 助手 (60448628)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 胎児 / 低酸素 / フェニトイン |
研究実績の概要 |
胎児心筋細胞に発現しているHERG チャネル電流(IKr)を阻害し徐脈を引き起こすことがin vitroでのみ証明されているフェニトインを用いて、胎児低酸素モデルを作成することを初期目標とした。CD1マウス交配で得られた妊娠マウスにフェニトイン投与した後に、小動物用超音波高感度イメージングシステムを用い、in vivoで胎仔の心血行動態を評価した。妊娠在胎日齢(ED)11.5のマウスにおいて、コントロール群とフェニトイン投与群で比較すると、フェニトイン投与群で胎仔心停止が多く認められ、心停止胎仔を除いた胎仔の心拍数も用量依存性に低下し、胎仔背側大動脈血流も用量依存性に低下した。しかしながら、組織低酸素の定量評価目的に、リアルタイムPCR法を用い、低酸素遺伝子マーカーであるHIF-1α、エリスロポエチン、GLUT-1、VEGF、Pfkfb3、IGFBP1、Bnip3の発現定量評価を行ったが、コントロール群とフェニトイン投与群(24時間)において低酸素マーカーの遺伝子発現には有意差が認められず、胎仔が低酸素に至っていることを直接証明することはできなかった。このため、フェニトインの暴露時間を延ばして同様の評価を行った。フェニトインを投与して48時間後にコントロール群とフェニトイン投与群を比較すると、胎仔心拍数は投与前との比較で低下を認めたが、その程度はフェニトイン投与12時間後と24時間後よりも小さかった。さらにフェニトインの暴露時間を延ばして胎仔の低酸素時間を延ばすことが必要であると考えられ、ED9.5から、ED10.5、ED11.5と連日フェニトイン投与を行い、ED12.5に胎仔の心血行動態を評価観察することとして、現在観察を継続している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
小動物用超音波高感度イメージングシステム上は、胎児徐脈を誘発できたが、遺伝子マーカーでは胎児低酸素を証明できていない。胎児低酸素状態が短いことや、低酸素の状態が軽度であることなどが原因と考え、フェニトインの投与量や投与から遺伝子マーカー計測までの時間を変更しながら実験を行っているが、投与量が多いと胎児死亡をきたしてしまい、適当な曝露環境の設定ができていない。現在、連日投与法を用いた実験を行っている。 新型コロナウイルス感染症の流行があり、マスクやエタノールの不足が続き、実験が出来ない期間や、時間短縮を要する期間が続いたことも遅れの原因となった。 また、2021年2月13日の地震により動物研究施設の損傷があり、実験制限を要したことも遅延の原因となった。
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今後の研究の推進方策 |
フェニトインの投与量や投与回数を変化させながら、胎仔死亡が少なく、かつ、HIF-1α、エリスロポエチン、GLUT-1、VEGF、Pfkfb3、IGFBP1、Bnip3等の低酸素遺伝子マーカーの発現に差がみられるモデル作成を目指す。モデルが確立したならば、miRNAアレイ解析を行う。低酸素マーカーに変化が生じた胎生日齢に、胎仔頭部および体部の一部、胎盤を採取し、直ちにRNA保存試薬(RNA later, Ambion) に浸漬する。miRNAアレイ解析は、TaqMan Low Density Array rodent、Card A and Card B(Applied Biosystems社)で行い、同社のExpression Suite Softwareにて約 700 種類の miRNA発現量を定量的リアルタイムPCRにて測定する。各群で発現量に有意差を認めた miRNAの中で Hif-1、Glut-1、Igfbp-1、erythropoietin 等に結合しうるmiRNA があるかどうかを miRNAデータベース Targetscan version5.1を用いて検出し、標的となるmiRNAを同定する。標的miRNAの同定が出来たならば、母体血液中での標的miRNA動態をしらべ、胎仔低酸素を母体血液で評価可能かどうかを検証する。 胎仔の低酸素遺伝子マーカーの発現に差が見られない場合は、小動物用超音波高感度イメージングシステムで最も高度の徐脈が認められたモデルを用いて、miRNAの同定を行うことも考慮する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の流行と2021年2月の地震のため、物品の購入、実験施設使用に制限がかかってしまい、予定の実験が出来なかった。次年度に遅れを取り戻すため、次年度に残額を使用したい。
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