| 研究課題/領域番号 |
20K09624
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| 研究機関 | 名古屋市立大学 |
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研究代表者 |
北折 珠央 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 講師 (40444989)
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| 研究分担者 |
杉浦 真弓 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (30264740)
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| 研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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| キーワード | 不育症 / 慢性子宮内膜炎 / 脱落膜 / 流産 |
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| 研究実績の概要 |
不育症患者の流産組織検体およびコントロール検体を収集し、免疫組織染色法を用いて脱落膜におけるCD138陽性形質細胞の発現の有無を調べ、慢性子宮脱落膜炎（CD）と考えられる病態があるか、それが不育症患者に及ぼす影響を後方視的に検討した。尚、CDの定義は慢性子宮内膜炎（CE）と同様にCD138陽性形質細胞の有無を基準とした。CEの診断においては、子宮鏡検査も有用とされており、CEに特徴的な所見については、発赤、浮腫、Micro polyp、Strawberry Spotなどがあるが、それだけで確定診断とされないことが課題でもある。
40歳未満の不育症患者を対象とし、抗リン脂質抗体症候群、子宮奇形、夫婦の染色体異常を認めるものは除外した。流産組織検体を用いて絨毛染色体検査を行い、染色体正常流産群、染色体異常流産群の２群に分けた。コントロールは不育症ではない妊娠初期中絶検体で染色体異常を除いたものを用いた。これらの検体の脱落膜でもCDと考えられる病態が存在するか、３群間の比較で流産や不育症にどのように関与するかを検討する。
不育症患者において、CEが流産の一因となっている可能性が明らかとなれば、その早期発見、治療が流産予防に有用となり得る。子宮鏡検査、子宮内膜の病理学的検査を合わせて行い、CEの早期診断を行っていく必要がある。また、病理学的診断には不可欠な組織診は内膜掻爬による疼痛を伴うため侵襲が低くない。組織診と比べ子宮鏡検査は疼痛が少ないため、子宮鏡検査でCEの存在を示唆する有意な所見を明らかにすることで、侵襲的な検査を減らし、患者への負担の軽減にもつながると考える。
CEの起因菌は多岐にわたり、いずれも急性子宮内膜炎をきたすものとは関連が低いことが知られている。子宮内の菌叢解析もあわせて行うことで、CEの原因菌の推定の一助とし、適切な抗生剤や膣内環境を改善する方法を探索する。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脱落膜炎研究：対象（不育症）の染色体正常流産検体13例、染色体異常流産検体13例、control（中絶）検体21例の脱落膜について、免疫組織染色を行った。そのうち全視野でCD138陽性形質細胞を1つ以上認めたものを弱陽性、HPFで2個以上集簇しているものを陽性、全視野で存在を認めない場合は陰性とした。対象の染色体正常流産、対象の染色体異常流産、controlにおいて、弱陽性（陽性含む）と陽性はそれぞれの群において、7/13（53.8％）と4/13（30.7％）、12/13（92.3％）と5/13（38.5％）、8/21（38.1％）と2/21（9.5％）であった。
CD138陽性形質細胞の頻度について、弱陽性でcutoffとした場合、対象において染色体異常群は染色体正常群と比べ出現が多い傾向を認めたが、有意差は認めなかった（p＝0.073）。対象の染色体異常流産群はcontrol群と比較し有意に多かった（p＝0.003）。対象の染色体正常流産群はcontrol群と比較し、多い傾向を認めたが、有意差は認めなかった（p＝0.484）。cutoffを陽性とした場合、対象の染色体正常群とcontrol群、対象の染色体異常群とcontrol群と比較では、どちらも対象群で多い傾向があるが有意な差は認めなかった。以上より、CD138陽性形質細胞の浸潤を認める慢性子宮脱落膜炎という病態の存在が不育症患者において示唆された。
菌叢解析研究：目標症例100例のうち現在までに41症例について、①子宮鏡検査、②子宮内腔液採取、③子宮内膜組織検査を行った。採取した検体は全て、次のように検体処理を完了している；②DNA抽出後、16sRNAを用いた菌叢データを得ている。③免疫組織染色にてCD138陽性細胞数をカウントした。現在①～③の各々の結果と臨床パラメーターを用いた中間的な統計解析を行っている。
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| 今後の研究の推進方策 |
慢性子宮脱落膜炎：今回、不育症患者における染色体正常流産、染色体異常流産の脱落膜検体にいずれについても、CD138陽性形質細胞浸潤をそれぞれ30～40％程度みとめた。また、コントロール群と比較し頻度は高い傾向にあった。CD138陽性形質細胞の流産組織の脱落膜への浸潤は、慢性子宮脱落膜炎および慢性子宮内膜炎の存在を示唆するものと考えられ、不育症についても不妊症における着床不全患者と同程度の割合で慢性子宮内膜炎を認める可能性がある。しかし症例数がまだ少ないため、現在症例数を増やして解析をおこなっている。当施設は不育症症例が多く、検体数は順調に集積される見込みである。
慢性子宮内膜炎と菌叢解析研究：引き続き目標症例数に達するまで検体採取及び検体処理、解析を継続していく予定である。CEの診断に最も有用な子宮鏡所見や診断スコアの確立を目指す。またCEの有無及び治療後の妊娠率、出産率についても検討を行う。
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| 次年度使用額が生じた理由 |
次世代シークエンサーにかかる費用は多額となるが、今年度の請求で決済されなかったため、2021年度余剰が生じた形になっているが2022年度にまとめて決済し使用する予定である。
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