研究課題
近年、免疫組織染色法によるCD138陽性形質細胞の有無で慢性子宮内膜炎(Chronic endometritis; CE)を診断する方法が用いられているが、子宮脱落膜でのCD138陽性形質細胞の存在を慢性子宮脱落膜炎(Chronic deciduitis; CD)とする概念が提唱されている。CE、CDともに不育症病態との関連は報告が少なく、今回染色体正常流産、染色体異数性流産の不育症患者へのCDの影響を前方視的に検討した。2011年から2019年にかけて稽留流産の診断で子宮内容除去術を行った40歳未満の不育症患者を対象とし、抗リン脂質抗体症候群、子宮奇形、夫婦の染色体異常、抗炎症薬投与歴、絨毛膜羊膜炎や子宮内膜症の既往を認めるものは除外した。49人の不育症患者のうち 染色体正常流産群(n=22)、染色体異数性流産群(n=27)と、流産歴のない妊娠初期中絶検体で絨毛染色体正常を確認したもの(n=17)を対照群として、CDの有無を比較検討した。診断については、CD138陽性形質細胞数でGrade0、1、2に分類した。さらに次回妊娠が確認できている46例でCDの有無による生児獲得率を比較した。Grade1 のCDは染色体正常流産群で18.2%、染色体異数性流産群で37.0%、対象群で23.5%であった。Grade2のCDは染色体正常流産群で45.5%、染色体異数性流産群で 55.6%、対象群で23.5%であった。それぞれの群を比較したところ、染色体異数性流産群において、CDの頻度が有意に高く、染色体正常流産、対照群では差は認めなかった。また、CDの有無にかかわらず生児獲得率、次回妊娠までの期間に差をみとめなかった。染色体異数性流産において有意にCDが多かったが、無治療での生児獲得率や次回の妊娠までの期間はいずれも差がなく、CDは不育症の直接的な原因とはいえない結果となった。
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Journal of Reproductive Immunology
巻: 156 ページ: 1-7
10.1016/j.jri.2023.103824