研究課題
悪阻(つわり)は妊婦に対し身体的・精神的苦痛を与え、女性のキャリアに対して負の影響を与えることにもつながる。したがって、悪阻のメカニズム究明と予防・改善法の確立が極めて重要である。妊娠期の嗅覚と味覚の変調は悪阻の悪心・嘔吐の誘因となる。原因として、妊娠期の内分泌変化が、脳に影響を与えることが考えられる。しかしながら、具体的にどの脳領域のどの神経細胞がホルモンの影響を受け、どのような変化がもたらされることで感覚変調が起こるのかについては明らかになっていない。本研究の目的は、妊娠に伴う嗅覚・味覚変動のメカニズムを、内分泌学的・神経科学的に解析し、悪阻の具体的な原因究明とその予防・改善法確立のための礎とすることである。嗅覚・味覚の感受性の変化を評価する行動実験系の確立し、妊娠によって嗅覚・味覚刺激に対する活動が変動する脳領域の同定を行った。これらの脳領域は非妊娠動物に比べ妊娠妊娠動物の忌避物質に対する忌避反応の感受性が上昇することが確認された。忌避行動行った個体の扁桃体において活性化した神経細胞数が有意に上昇することが明らかになった。さらに、扁桃体内の亜核において詳細に解析したところ、基底外側核と後外側皮質核で活性化される神経細胞が多いことを見いだした。後外側皮質核では、妊娠初期および後期に一過的なシナプス数の増加が起きること、妊娠中期―後期にエストロゲン受容体α(ERα)の発現が有意に減少することが明らかになった。一方、嗅覚伝導路の梨状皮質では、妊娠中期にシナプス数が増加し、妊娠初期―後期にERαの発現が減少するといった、脳領域間で反応性が異なることが示された。また、扁桃体や梨状皮質にオキシトシン含有神経終末の分布を認め、エストロゲンに加え、オキシトシンも妊娠期の感覚変調に影響を与えていることが示唆された。
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Heliyon
巻: 10 ページ: e26780
10.1016/j.heliyon.2024.e26780.
Sci Rep
巻: 14 ページ: 3601
10.1038/s41598-024-53103-2.