研究課題/領域番号 |
20K09626
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
井箟 一彦 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (60303640)
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研究分担者 |
西尾 和人 近畿大学, 医学部, 教授 (10208134)
岩橋 尚幸 和歌山県立医科大学, 医学部, 博士研究員 (50750907)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 卵巣癌 / リキッドバイオプシー / 網羅的遺伝子解析 / 血中循環腫瘍DNA |
研究実績の概要 |
卵巣癌は、進行期で診断されることが多く、婦人科悪性腫瘍の中で最も予後不良の疾患である。Liquid biopsy による血中腫瘍循環DNA (ctDNA)による遺伝子変異解析は、非侵襲的に繰り返しリアルタイムな情報を獲得でき、近年注目されている。本研究では卵巣癌におけるctDNAの網羅的遺伝子変異解析を行い、臨床病理学的検討と予後因子の検討を行った。本年度は卵巣癌51例における治療前の血漿検体を用いて腫瘍由来の遺伝子変異(197遺伝子)を CAPP-seqにて検出した。bTMBは1Mbあたりの非同義体細胞変異数とした。研究の結果、48例(94%)に何らかの非同義体細胞変異を認め、最も高頻度の変異はTP53 (37.3%)、次いでAPC(17.6%)、KRAS(15.7%)の順であった。高異型度漿液腺癌ではTP53 (16/24, 66.7%)、明細胞癌ではAPC (4/13, 30.8%)、類内膜腺癌ではPIK3CA (2/5, 40%)、粘液腺癌ではKRAS (2/3, 66.7%)が最も頻度の高い遺伝子変異であった。次に予後因子の検討を行ったところ、全症例と進行期症例において、ctDNA濃度が高い症例は低い症例に比べて無増悪生存期間(PFS)が延長していた(p=0.01,0.005)。また全症例において、病的変異が検出された症例は、検出されてない症例に比べてPFSが延長していた(p=0.048)。bTMBは組織型や進行期による有意差はなく、予後との関連は認めなかった。以上より、卵巣癌においてctDNAを用いた各組織型の遺伝子プロファイリングが可能であり、今後有用な予後因子となる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
卵巣癌患者からの検体採取は順調に進み、初年度で、50例以上の解析を行うことができており、血中循環腫瘍DNAを用いた網羅的遺伝子変異解析により、卵巣癌の組織型ごとの遺伝子変異の特徴や、予後との関連のデータも示すことができている。今後もリキッドバイオプシーの有用性をさらに検討していく。
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今後の研究の推進方策 |
さらに卵巣癌の患者からの検体数を増やして、リキッドバイオプシーによる網羅的遺伝子変異解析が、予後予測や再発の早期発見、さらには、治療中の病勢のモニタリングに有用であるかどうかを、遺伝子プロファイリング解析データと臨床データとを結びつけながら検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、すでにセットアップされている機器を十分に利用して効率的に研究が遂行できて消耗品(試薬等)を節約することができたことと、学会出張費用を当初の予定より使用しなかったためである。次年度からは、さらなるデータ解析費用が見込まれ、さらに学会での成果発表、論文校正代など、本年度からの繰越を含めて、有効利用する計画である。
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