研究課題/領域番号 |
20K09627
|
研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
嵯峨 泰 自治医科大学, 医学部, 准教授 (70360071)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | バソヒビン2 / 卵巣がん / 血管新生 / 抗がん剤感受性 / ゲノム編集 |
研究実績の概要 |
本邦で発見された新規血管新生調節因子バソヒビンファミリーの中で、主に悪性腫瘍が産生し腫瘍血管新生を促進するバソヒビン2に注目し、卵巣がん新規治療の開発を目指した基礎研究を行っている。これまでにバソヒビン2をRNA干渉や中和抗体を用いて阻害することにより卵巣がんの血管新生を抑制し進展を抑えられることを基礎実験で検証した。さらにバソヒビンファミリーは微小管活性に必須の酵素活性をもつことから、バソヒビン2をノックアウトした卵巣がん細胞は、微小管に作用点をもつ抗がん剤であるパクリタキセルの感受性が増強することを発見した。これらのことからバソヒビン2を標的とした治療戦略は抗血管新生のみならず、従来の化学療法を併用することによりその効果を腫瘍特異的に増強させる可能性が示唆された。本年度はパクリタキセル以外の抗がん剤感受性への影響を検討した。その結果、ゲノム編集技術を用いて樹立したバソヒビン2ノックアウト卵巣がん細胞は複数の抗がん剤に対して感受性が増強した。また、バソヒビンノックアウト卵巣がん細胞をトランスクリプトーム解析したところ、抗がん剤感受性に関わる多数の遺伝子発現の変化が観察された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
バソヒビン2が微小管の活性に必須の酵素活性をもつことが複数の施設から相次いで報告された。バソヒビン2を標的とした治療戦略を卵巣がんに応用する場合、現在の卵巣がん標準治療であるパクリタキセルとカルボプラチンとベバシズマブ併用療法の様に、抗がん剤との併用が想定される。その際、卵巣がん化学療法の基幹薬剤であり、微小管に作用点をもつパクリタキセル感受性への影響が懸念されため検証を行った。ゲノム編集技術を用いて樹立したバソヒビン2ノックアウト卵巣がん細胞ではパクリタキセル感受性は増強し、その機序として細胞周期のM期後期への移行阻害とパクリタキセル高感受性であるM期中期の集積が示された。さらに他の複数の抗がん剤に対する感受性の増強も認められた。
|
今後の研究の推進方策 |
バソヒビン2ノックアウト卵巣がん細胞の抗がん剤感受性増強機序を明らかにする。トランスクリプトーム解析によりスクリーニングされた候補因子を絞り込み、検証を進める。また最近、バソヒビンファミリーはリガンド結合膜受容体の細胞内輸送に関わることが報告されており、それとの関連も検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度は既存の備品、消耗品で遂行可能なin vitro実験が主であったため、高価な実験動物を購入する必要がなかった。次年度以降は動物実験を予定している。
|