| 研究課題/領域番号 |
20K09631
|
|---|
| 研究機関 | 金沢医科大学 |
|---|
研究代表者 |
高倉 正博 金沢医科大学, 医学部, 准教授 (20313661)
|
|---|
| 研究分担者 |
齋藤 まゆみ 金沢医科大学, 医学部, 助手 (20869341)
|
|---|
| 研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
| キーワード | 子宮内膜がん / 細胞競合 / オルガノイド培養 |
|---|
| 研究実績の概要 |
子宮内膜癌におけるAYA世代発症は全体の約20%を占めるが、妊孕性温存は必ずしも容易ではない。若年発症子宮内膜癌の大部分は正常内膜から子宮内膜増殖を経て段階的に発生するため、ごく初期の異常細胞を除去することができれば最善である。細胞競合は遺伝子異常が蓄積しはじめた初期の異常細胞を周囲の正常細胞が排除する機序である。子宮内膜でも細胞競合が癌化を阻止している可能性が考えられるが、哺乳類細胞での研究自体が端緒についたばかりであり、子宮内膜癌における検討は未だなされていない。本研究では子宮内膜オルガノイドを用いて子宮内膜癌発がん阻止における細胞競合の役割を明らかにし、子宮内膜の癌化を「未病」で食い止める道を拓くことを目標とする。
本年度は子宮内膜オルガノイド培養系の樹立を目指す予備実験として、子宮内膜がん細胞株（HEC-1、Ishikawa）を用いてin vitro培養系を構築するモデル実験を行った。先行研究（Nat Cell Biol 2017; 19: 568-577）に従い培養条件を調節し三次元培養が可能なことを確認した。
子宮内膜癌の初期変化として知られている遺伝子変異をレンチウイルスベクターで導入し、その細胞が排除されるかあるいはドミナントになるかを検討するためにタイプ1子宮内膜癌での異常頻度が高いことが既によく知られているPTEN, CTNNB1, PIK3CA, KRAS発現ベクターを作製し、導入マーカーとしてGFP遺伝子も同一ベクターに導入した。この際に導入頻度を調節して散発的（1/100～1/20程度）に変異が入るように導入条件を整えた。この結果に基づいて次年度は子宮内膜検体由来の細胞を用いた子宮内膜オルガノイド培養実験を行う。
|
| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1. 子宮内膜オルガノイドを用いた実験系の確立
本年度は子宮内膜オルガノイド培養系の樹立を目指す予備実験として、子宮内膜がん細胞株（HEC-1、Ishikawa）を用いてin vitro培養系を構築するモデル実験を行った。先行研究（Nat Cell Biol 2017; 19: 568-577）に従い培養条件を調節し三次元培養が可能なことを確認した。
2. 子宮内膜オルガノイドでの散発的遺伝子変異誘発による細胞競合実験
子宮内膜癌の初期変化として知られている遺伝子変異をレンチウイルスベクターで導入し、その細胞が排除されるかあるいはドミナントになるかを検討するためにタイプ1子宮内膜癌での異常頻度が高いことが既によく知られているPTEN, CTNNB1, PIK3CA, KRAS発現ベクターを作製し、導入マーカーとしてGFP遺伝子も同一ベクターに導入した。この際に導入頻度を調節して散発的（1/100～1/20程度）に変異が入るように導入条件を整えた。コロナ禍の影響もあり臨床検体の収集は今年度は断念し次年度実施予定とした。
|
| 今後の研究の推進方策 |
所属機関の倫理委員会の承認のもと、手術検体からの子宮内膜組織を回収し、今年度検討した条件でオルガノイド培養を行う。オルガノイド培養がうまく機能した場合は次の段階として、遺伝子導入による細胞競合への影響を検討する実験を行う。
本実験では今年度作成したPTEN, CTNNB1, PIK3CA, KRAS発現ベクターを用いて遺伝子導入する。本ベクターはGFP遺伝子も標識遺伝子として同時に導入するため、GFP発現細胞が排除されるかあるいはドミナントになるか検討する。特定の遺伝子で細胞競合に変化が認められた場合はそのシグナル経路を遮断あるは活性化することでその機能を確認する。単独の遺伝子変異では変化が認められない場合はこれらを組み合わせた複数の変異を導入した細胞で検討する。またエストロゲン依存性である子宮内膜癌の特徴を踏まえ性ステロイドが及ぼす影響に関しても検討したい。
|
| 次年度使用額が生じた理由 |
今年度は予備実験のためのin vitro実験が主体であり、試薬・消耗品の使用は少なく経費がかからなかった。またコロナ禍のため旅費は使用しなかった。遺伝子導入のためエレクトロポレーターを共同購入した。
使用計画：臨床検体での検討に関しても同様に試薬必要が生じるため試薬の購入費用が必要である。また論文作成のための英文校正料、投稿料も必要になると考えられる。
|
