研究課題
本研究の目的は子宮頸部腺系病変早期発見のために、細胞診にて異型腺細胞(AGC)と判定された検体を組織診断結果に基づいて正確に層別化する事である。研究計画書に基づいて、2022(R04)年度は細胞診にてAGCと判定された細胞診標本からZ軸情報を含む広視野・高解像度のフルフォーカス合成画像を作成し、組織診結果に基づいてAIによる深層学習を行い、各種AIモデルから得られた、病変(AGC)と非病変(AGCでない)を区別する正解率を得た。細胞診採取法別の正解率は、1.直接塗沫法(従来法): 88%、2.液状化検体法: SurePath法(SP法)89%、ThinPrep 法(TP法) 85%であった。正解率はSP法89%、従来法88%、TP法85%の順に高く、いづれの場合も従来の細胞診の感度80-84%を上回る結果であった。しかし、実用化を考えた場合十分有意な結果とは言えなかった。その原因として、今回AI学習に用いたフルフォーカス合成画像はZ軸情報を合成した2D画像であったことが推定された。一般的に腺系病変は組織構築の変化が主体となる病変であるためZ軸情報がそのまま温存された立体的(3D)画像で学習した方が、精度上昇が期待される。また、通常、顕微鏡にて細胞診所見を観察する場合は組織診と違ってZ軸を動かしながら立体的(3D)画像で観察している。同様に、AIがAGCと推定した画像を確認する場合も3D画像が保存されていることが実務上必須と考えられた。本研究の結果から、より精度の高いAI細胞診システム構築のためには、3D画像取得可能な画像解析システムのイノベーションが必要であることが想定された。
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