研究課題/領域番号 |
20K09638
|
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
安達 聡介 新潟大学, 医歯学総合病院, 助教 (50613147)
|
研究分担者 |
吉原 弘祐 新潟大学, 医歯学系, 研究准教授 (40547535)
田村 亮 新潟大学, 医歯学総合病院, 助教 (70650620)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 卵巣類内膜癌 / 単一細胞シークエンス / 子宮内膜症 / 子宮内膜 |
研究実績の概要 |
申請者らは、①これまで内膜症関連卵巣癌発症に関連すると考えられていたARID1A・PIK3CA・KRASなどの癌関連遺伝子が、すでに子宮内膜症で高頻度に体細胞変異を起こしていること、②それらの癌関連遺伝子の体細胞変異は内膜症上皮だけで認め、内膜症間質では認めないこと、を明らかにしている。子宮内膜症から類内膜癌が発症するメカニズムを明らかにするには、内膜症→異型内膜症→類内膜癌と進行するにつれて蓄積するゲノム・エピゲノム異常の検索が必要であり、同定された分子異常について子宮内膜症上皮をリソースとした機能解析で検証することが重要である。そこで、本研究では、卵巣類内膜癌症例の子宮内膜症から類内膜癌への移行部位に注目し、同部位から単一細胞をレーザーマイクロダイセクションで一つずつ切り出し、微量DNAを用いた単一細胞ゲノム・エピゲノム解析を行う。内膜症から癌に移行するにつれて蓄積されるゲノム・エピゲノム異常を同定することで、類内膜癌の発症メカニズムを解明することを目的として、研究を進めている。 本年度は、発生起源である子宮内膜における癌関連遺伝子注目し、解析を実施した。32名の女性からサンプリングを行い、891本の腺管を単離し、単一腺管シークエンスを実施した。正常子宮内膜で変異の頻度の高い遺伝子はPIK3CAとKRASで、それぞれ全体の15.6%、10.9%で変異を認めた。各変異アリル頻度は0.5付近に中央値を認め、多くの腺管がモノクローナルな癌関連遺伝子変異を有していた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、卵巣類内膜癌の発症メカニズムを解明することを目的としているが、本年度は正常子宮内膜組織、特に内膜の最小機能単位である子宮内膜腺管における癌関連遺伝子変異の生物学的意義を明らかにすることができ、目的達成に向け順調に進んでいると判断される。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は、内膜症オルガノイドを用いた類内膜癌発症の原因遺伝子の同定を進める予定にしている。子宮内膜症から癌が発生することを検討するのに適したリソースがないことから、当科で開発した婦人科癌スフェロイド培養法を改良して子宮内膜症オルガノイドを作成する。まず子宮内膜症オルガノイドに対して全ゲノムシークエンスを行い、オルガノイドのゲノム異常を確認しておく。単一細胞シークエンスで同定された原因遺伝子候補が、子宮内膜症オルガノイドで異常を認めないことを確認したのち、原因遺伝子変異を子宮内膜症オルガノイドに導入する。遺伝子異常導入前後でオルガノイドの形態変化・細胞増殖能・浸潤転移能・生存能・細胞周期変化・遺伝子発現などの表現型の変化を検証する。次に異常遺伝子の発現調節により、形態、細胞増殖、細胞浸潤能、アポトーシスに与える影響をMTSアッセイ、スフィアアッセイ、マトリゲルアッセイ、フローサイトメトリー等でin vitroで検討する
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度は全ゲノムシークエンスを行う予定にしているため、次年度に一部費用を繰り越すこととした。
|