研究課題/領域番号 |
20K09640
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
中村 香江 名古屋大学, 低温プラズマ科学研究センター, 特任講師 (10744047)
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研究分担者 |
田中 宏昌 名古屋大学, 低温プラズマ科学研究センター, 教授 (00508129)
芳川 修久 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (60804747)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 卵巣がん / 大気圧プラズマ / プラズマ活性液 / がん微小環境 / マクロファージ |
研究実績の概要 |
卵巣がんは腹膜播種を伴った進行がんとして発見される場合が多く、故に難治性であり、新規の治療法が求められている。一方、大気圧プラズマの抗腫瘍活性を汎用性の高い液体化したプラズマ活性液は、これまでの抗腫瘍療法とは全く異なる作用機序でがん細胞を殺傷することが示唆されている。本研究では、腹膜播種の形成・進展において重要な役割を果たす腹膜中皮細胞・免疫系細胞を介した腹膜微小環境におけるプラズマ活性液の抗腫瘍効果を明らかにし、新規治療技術としての基礎的知見の集積を目的とする。 腹膜播種は、がん細胞のみならず本来なら恒常性維持に関わる細胞が、癌関連腹膜中皮細胞、腫瘍浸潤リンパ球、腫瘍関連マクロファージ等に変化し、難治性・治療抵抗性の基盤となって存在している。一方、これまでの研究において、プラズマ活性液の腹腔内投与は、マウス卵巣がん腹膜播種モデルにおいて、腹腔内へのがん細胞の播種を抑制し、マウスの生存期間を有意に延長すること明らかにしてきた。そこで、本研究において、プラズマ活性液による腹膜微小環境への影響を介した播種抑制効果を明らかにするために、がん細胞の播種巣、特に大網組織中のがん微小環境に着目し、組織中に存在するマクロファージとその特徴について解析を行った。その結果、がん細胞の播種3日後には治療対象群のマウス大網組織において、がん細胞の播種および増殖が確認されたのに対し、プラズマ活性液治療群では、がん細胞の増殖が有為に抑制されていることが明らかとなった。組織学的解析の結果、顕著なM1型マクロファージの浸潤が見られ、抗腫瘍免疫が活性化された可能性が示唆された。これらの結果より、初期のがんの播種に対しプラズマ活性液が免疫応答に変化をもたらすことでがんの進展を抑制する可能性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ渦における、実験実施の制限や、物品などの入手が一部困難であった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究成果により、プラズマ活性液が、がん微小環境に抗腫瘍免疫応答を誘導する可能性を示した。しかし、がんの進展に対する腹膜微小環境は種々の細胞が存在し、それらが相互に影響し活性化や分化を誘導している。次年度以降は、中皮細胞やリンパ球にも焦点をあて、正常腹膜とがん性腹膜での微小環境の違いに着目し、プラズマ活性液が、がん細胞が生きづらい微小環境へと変化を誘導することができるかどうかを、培養中皮細胞並びにリンパ球細胞を用いて検討する。一方で、プラズマ活性液によりがん細胞に誘導されたオートファジー細胞死が、腫瘍内免疫原性細胞死を誘導するかどうかについても検討を行い、がん細胞を介した間接的な免疫活性化の効果とそのメカニズムについても明らかにしていく。
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