研究課題/領域番号 |
20K09646
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
小野山 一郎 九州大学, 大学病院, 助教 (00444802)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | DNA脱メチル化 / 5hmC / 卵巣漿液性癌 |
研究実績の概要 |
癌におけるエピジェネティクス研究はDNAメチル化とヒストン修飾を中心に大いに発展してきたが、DNAメチル化が精力的に研究されて来たのに対して、DNA脱メチル化に関してはまだまだ解明されていないことが多い。そこで申請者はDNA脱メチル化過程の中間産物である5ヒドロキシメチルシトシン(5hmC)と癌に着目して研究を進めている。 本研究課題において申請者は、卵巣漿液性癌の転移症例で5hmCレベルが高いことを見出した。現在は卵巣漿液性癌における5hmCレベルの違いが転移の有無とどのように関わっているのかを明らかにすることを目的に解析を行っている。具体的にはゲノム上のどの領域で5hmCレベルにどのような差があるのかを臨床検体を用いて次世代シークエンサーでの解析を行っている。 最終的には癌の形質(転移の有無)と5hmCレベルの差異をエピゲノムレベルで結びつけることを目標としており、5hmCと癌の進展・転移との関係およびその機構を明らかにすることは癌を全く新しい視点で捉える研究に繋がり、癌研究における新しい領域となることが期待される。 また本研究課題に密接に関連した研究として、5hmCレベルの子宮頸癌発癌過程における変化について解析し、そのメカニズムの一端を明らかにした成果を論文発表した。この論文ではまずCIN3、子宮頸癌症例において5hmCレベルが低下することを明らかにし、子宮頸癌の原因であるヒトパピローマウイルスに細胞が感染した後、どのように5hmCレベルが低下するのかを明らかにしている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の解析の根幹となるのは卵巣癌臨床検体を用いたゲノムワイドな5hmCの解析である。具体的には卵巣癌の手術検体からDNAを抽出し、抗5hmC抗体を用いた免疫沈降を行って次世代シークエンサー用のライブラリーを作製する。ライブラリーをシークエンスにかけてデータの取得しその解析を行う。非常に行程の多い実験であるが、既にデータの取得は完了しており、現在はデータの解析中である。
これまでの解析で、リンパ節転移の有無に関わらず卵巣漿液性癌ではがんに関わる多くの遺伝子オントロジーに5hmCのピークが存在するが、特にリンパ節を有する症例でその傾向が強く、さらにリンパ節転移を有する症例では5hmCのピークがEMTやStem cellに関わる遺伝子群に存在していた。
現在これらのデータ解析をさらに進めながら投稿準備中であり、予定通り順調に進んでいると考えることができる。
|
今後の研究の推進方策 |
次世代シークエンサーで取得したデータを多角的に解析し、論文発表できる形にするため、バイオインフォマティシャンと密なディスカッションを行っている。また論文の執筆を行いながら、次の研究の進め方について検討を行っている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次世代シークエンサーを用いた解析は年々価格が安くなってきており、次年度使用額が生じた主な理由となっている。今後、解析を進めた時に更なるサンプル数の確保が必要になることも想定され、当該年度に使用しなかった予算を充てることとしている。 また投稿後のリバイス実験の費用にある程度の予算が必要になると考えている。
|