研究課題/領域番号 |
20K09647
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
小林 浩 奈良県立医科大学, 医学部, 研究員 (40178330)
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研究分担者 |
吉元 千陽 奈良県立医科大学, 医学部, 研究員 (00526725)
山田 有紀 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (20588537)
松原 翔 奈良県立医科大学, 医学部附属病院, 研究員 (20825236)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | Adenomyosis |
研究実績の概要 |
酸化ストレス、抗酸化、炎症、組織修復、線維化の程度を評価し、重症度に寄与するパラメータを抽出するため、酸化ストレスマーカー(8-OHdG)、抗酸化マーカー(CD44v9、HO-1)、炎症としてのM1,M2マクロファージ数やその比率、線維化マーカー(1型コラーゲン、TGF-βとその下流シグナル)を免疫組織染色で評価した。その結果、以下の成果が得られた。子宮腺筋症細胞は、過酷な環境で生き残るためのエネルギー生成源としてグルコースを利用する。細胞生存能と疾患重症度は相関するため、細胞が生存するために、必須の要因を決定した。酸化ストレス環境下で細胞が生存するためのエネルギー産生は、ミトコンドリアの酸化的リン酸化ではなく、好気性解糖に依存していた。酸化的リン酸化から好気性解糖への代謝変換は、過剰な活性酸素種(ROS)の生成を抑制し、酸化的細胞死を抑制した。さらに、病変に浸潤するマクロファージ、特にM2マクロファージは、免疫抑制に寄与し、疾患の進行を促進するサイトカインを発現した。M1,M2マクロファージの極性化は細胞特有の代謝再プログラミングにより規定されていることも判明した。特に、M1マクロファージは解糖系代謝が亢進し、M2マクロファージは酸化的リン酸化が活性化されていた。このように、細胞の代謝変換は、マクロファージの表現型および機能の変化に関係していた。したがって、代謝の再プログラミングを調節する重要な分子を標的とするいくつかの薬剤は、子宮腺筋症の治療選択肢となる可能性がある。今後は、腺筋症細胞とマクロファージの相互作用の複雑さは、治療を成功させるために考慮されるべきであり、代謝の再プログラミングにおける課題に焦点を当て、子宮腺筋症の非ホルモン療法の開発にもつなげたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
代謝の再プログラミングを調節する重要な分子を標的とするいくつかの薬剤は、子宮腺筋症の治療選択肢となる可能性があり、標的遺伝子の絞り込みに成功した。研究は順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
MRスぺクトロスコピーおよび経腟光学プローベによる疾患重症度(月経困難症、過多月経、貧血、不妊症、産科合併症の既往等)との関連を評価の準備を行った。質的画像診断、各免疫染色マーカーと疾患重症度(月経困難症、異常子宮出血、不妊症、周産期合併症、治療効果や副作用など)を多変量解析し、重症度に最も寄与する因子を抽出し、質的画像診断による鉄濃度がどの程度疾患重症度を予知できるか後方視的に評価する準備を始めた。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定通りの支出であったが、前年度未使用額として450,499円が残ったため、439,389円の次年度使用額が発生している。次年度3編の論文をオープンアクセスとして投稿予定であり、このために使用する。
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