研究課題/領域番号 |
20K09649
|
研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
江本 精 国際医療福祉大学, 臨床医学研究センター, 教授 (80258540)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | がん幹細胞 / 血管新生 / ナノキャリア / 子宮癌肉腫 / VEGF / Azaspirene / セラミックス微小球 / 腫瘍血管 |
研究実績の概要 |
固形がんの多くは未だに特約された治療法は確立されておらず、がん死は先進国の死因の第一位のままである。近年、がん化学療法の大きなエポックとなったのは腫瘍が誘導する血管新生である。その阻害因子として注目されているAzaspireneは、興味深いことにVEGFが誘導するRaf-MEK-ERK経路の活性化を抑制することが判明した。そこで早稲田大学先進理工学部生命化学科との共同研究により、ヒト子宮癌肉腫のがん幹細胞が作り出す異質的な腫瘍血管に対してラセミ化させたAzaspireneが同天然体と同等以上の血管新生阻害作用を有することを報告した(Hirasawa S, Kanomata N, Emoto M. J Org Chem 2018)。糸状菌Neosartorya sp.が生産するAzaspireneの血管新生抑制作用は、我々の予測以上に高度であった(Org Lett 2002)。そこで、ラセミ化させたAzaspireneの精製に初めて成功、その抗腫瘍効果を報告した(Anticancer Res 2015)。現在さらなる効力をもたらすAzaspireneの精製に努めている。 Azaspireneは、強力な血管新生因子であるVEGFが誘導するRaf-MEK-ERK経路の活性化を抑制することが判明しているため、本課題で希少な高度VEGF産生株であるヒト子宮癌肉腫FU-MMT-1株(Cancer 1992)を使用する意義は極めて高い。更に、子宮癌肉腫のがん幹細胞が作り出すheterogenicな腫瘍血管に対して、本年度ではセラミックス微小球DDSにAzaspireneが担持できるよう基礎研究を行ってきた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍が研究遂行全体にわたり長期間の悪影響を与えているのは否めない。各論的には我々がこれまでに行った子宮癌肉腫血管新生のターゲット遺伝子探索についてであるが、子宮癌肉腫は低分化型を含めた子宮体癌と比較して、25種のmiRNAの発現量が上昇し、24種のmiRNAの発現量の低下が認められたことが前提である。これらの予備的成果を踏まえて、子宮癌肉腫幹細胞と血管ニッチとのパスウェイが明らかにすれば、同エリアを制御・破壊する新たな治療戦略が構築できる。現時点では、本腫瘍の幹細胞血管ニッチの遺伝子制御に関してのパスウェイ検索を進めているが、遺伝子発現の交雑性の評価に時間がかかっている。
|
今後の研究の推進方策 |
子宮癌肉腫の血管新生ターゲット遺伝子検索の推進:課題となっているのは、本腫瘍の幹細胞血管ニッチの遺伝子制御に関してのパスウェイ検索での遺伝子発現の交雑性である。コロナ禍の影響も長引いている状況にあるので、多施設との協力を進めながら複数の解析レベルで子宮癌肉腫幹細胞と血管ニッチとのパスウェイを明らかにしていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
予測以上に長引くCOVID-19パンデミックにより、まず移動制限が余儀なぐされ、次に研究にかかわるスタッフ等も濃厚接触者となり実質的な研究の遅延につながった。それによって、実験の遂行と学会参加や研究者間の交流やミーティングが著明に減少した。ただ、一部の学会はオンラインにて開催されたので、その費用を計上している。
|