研究課題
①スタチン製剤の細胞増殖抑制効果に関わる分子生物学的特性の探索既存卵巣癌細胞株11種類とヒト卵巣癌腹水由来細胞株6種類、合計17細胞株にマイクロアレイ解析を行い、遺伝子発現とスタチン投与による細胞生存率からピアソンの積率相関係数に基づいてスタチンの奏効に関与している可能性のある遺伝子群を抽出した。正の相関関係を示す上位遺伝子にNRDC、PPID、XRN2、VDAC1、HSP90AB1が、負の相関関係を示す上位遺伝子にLDLRAP1、EPN3、P4HTM、VPS37C、PHF2が上がった。この中でこれまでの研究成果に関連のあるVDCA1遺伝子(r; 0.74)とLDLRAP1遺伝子(r; -0.88)に着目し、両遺伝子の発現を既存卵巣癌細胞株とヒト卵巣癌腹水由来細胞株で検証したところ、VDAC1遺伝子の発現はスタチンが奏効しやすい漿液性癌や明細胞癌で高く、ヒト卵巣癌腹水由来細胞株でもスタチンに奏効を示す細胞株での発現が高かった。一方で、LDLRAP1遺伝子の発現はスタチンが奏効しにくい粘液性癌で高く、ヒト卵巣癌腹水由来細胞株でもスタチンの奏効率が低い細胞株での発現が高かった。以上より、スタチンの卵巣癌奏効に関わるバイオマーカーとしてVDAC1遺伝子とLDLRAP1遺伝子が樹立された。②ヒト臨床検体を用いたスタチン製剤の奏効確認と奏効に関わる臨床病理学的因子の検討Histoculture Drug Response Assay法により臨床検体でのスタチン奏効を増殖抑制率より検討すると、スタチンは特に漿液性癌症例と明細胞癌症例に奏効しており、パクリタキセルやカルボプラチンと比較しても同等の増殖抑制率を示している症例も認めた。また、スタチンとパクリタキセルやパノビノスタットとの相乗効果を確認し、マウスへの投与が血液生化学的に安全であることも明らかにした。
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Pharmaceuticals (Basel)
巻: 15 ページ: 124
10.3390/ph15020124