研究課題/領域番号 |
20K09656
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
小松 篤史 日本大学, 医学部, 准教授 (90463851)
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研究分担者 |
川名 敬 日本大学, 医学部, 教授 (60311627)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | HPV16型E7蛋白 / 子宮頸癌 / コンパニオン診断 / CIN / E7発現乳酸菌製剤 |
研究実績の概要 |
子宮頸癌にはヒトパピローマウイルス(HPV)の癌蛋白質E7が恒常的に発現していることから、E7は癌ワクチンの標的分子(癌抗原)と言える。我々は乳酸菌ベースのHPV E7ワクチン(E7発現乳酸菌製剤)を開発、子宮頸部高度扁平上皮内病変(CIN2-3)への経口投与により抗E7細胞傷害性免疫誘導能(以下、E7-CTL)を子宮頸部に誘導し病変を退縮させることを証明してきた。さらにE7特異粘膜IFN-γ産生細胞によりE7-CTLが最大となるE7発現量も解明(IGMKK16E7)し報告した。が、今までのHSILに対する臨床研究によってこの薬理効果には個体差があることも同時に示された。その有効性は癌細胞又はCIN細胞における標的抗原であるE7蛋白質の発現量に比例すると推測される。つまり腫瘍細胞におけるE7発現量は本製剤のコンパニオン診断となる可能性がある。よって本研究では、HPV E7標的免疫療法のコンパニオン診断を開発することを目的としている。 2022年度はIGMKK16E7の医師主導治験の検体を用いたE7発現量測定をメインに行っている。2019年夏に開始したE7発現乳酸菌製剤IGMKK16E7の医師主導治験(第I/II相ランダム化比較試験)では、HPV16陽性CIN2、もしくはCIN3患者(登録目標164例)から、試験薬又はプラセボ薬の服用前に子宮頸部擦過細胞をThinprepを用いて採取している。これを用いてHPV16E7の発現量を測定し、治験登録患者の有効性と治験開始前の子宮頸部擦過細胞中のHPV16E7発現量の相関性を検討している。2022年に治験のキーオープン、ランダム化の割付結果が判明したため、臨床的有効性(CR: 正常化、PR:CIN1、SD:CIN2-3、PD:浸潤癌)とE7発現量の関連に関しても解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
主に2020年からのコロナ禍の直撃により検体採取が予定通りに集まらずに時間を要したことが最大の要因である。2019年以降、近医からの紹介や当院に受診する症例が明らかに減少していた。本治験の対象者はHPV16陽性CIN2、もしくはCIN3患者である。これら子宮頸部異形成は症状に乏しく、無症状であることがほとんどであり、ほぼ全例が健診で見つかる病態である。したがってコロナ禍で病院を受診すること、つまり健診を行うことが避けられていたことで、子宮癌検診を行う母数が大幅に減少したと考えられた。癌検診を行う母数が減少すれば、必然的に子宮頸部異形成症例は減少する。本治験の対象はさらに子宮頸部異形成症例の中のHPV16陽性CIN2,もしくはCIN3患者であることから、治験の対象症例の集積に難渋することは明白である。つまり、治験対象症例の集積に時間を要したことが最大の要因であると推測された。 また上記の影響により、2019年夏に開始したE7発現乳酸菌製剤IGMKK16E7の医師主導治験(第I/II相ランダム化比較試験)のキーオープン、ランダム化の割付結果が判明したのが2022年秋頃にずれ込んだことも進捗がやや遅れていることに影響している。現在はこの治験のキーオープン、ランダム化の割付結果を元に、IGMKK16E7の効果・有効性とHPV16E7の発現量との関連の解析を急ピッチで進めている。IGMKK16E7の臨床的有効性(CR: 正常化、PR:CIN1、SD:CIN2-3、PD:浸潤癌)を解析し、さらにE7発現量との関連を検討中である。さらにこれらの患者のE7特異的TH1型免疫応答も本試験の中で解析するため、免疫応答能との比較検討も行っている。この検討は現在順調に進んでおり、2023年度中頃には終了し成果を出すべく、解析・検討を進めている段階である。
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今後の研究の推進方策 |
現在までの進捗状況はわずかに遅れているが、その原因は2019年夏に開始したE7発現乳酸菌製剤IGMKK16E7の医師主導治験(第I/II相ランダム化比較試験)の対象症例の集積に難渋したことと、それによる治験のキーオープン、ランダム化の割付結果の判明が遅れたことが最大の要因である。現在は既に治験対象症例の集積は終了し、治験のキーオープン、ランダム化の割付結果が判明していることから、今後はスムーズに研究が進行していくと推測される。 具体的にはHPV16陽性CIN2、もしくはCIN3患者(登録164例)から、試験薬又はプラセボ薬の服用前に子宮頸部擦過細胞をThinprepを用いて採取しており、これを用いてHPV16E7の発現量を測定し、治験登録患者の有効性と治験開始前の子宮頸部擦過細胞中のHPV16E7発現量の相関性を検討している。キーオープン、ランダム化の割付結果を元に臨床的有効性(CR: 正常化、PR:CIN1、SD:CIN2-3、PD:浸潤癌)とE7発現量の関連を調べることが可能であり、これらの患者のE7特異的TH1型免疫応答も本試験の中で解析するため、免疫応答能との比較検討を行っていく。 これらの検討によりCIN2-3におけるE7発現量の測定と、E7発現乳酸菌製剤(IGMKK16E7)の臨床的有効性との相関を調べることで世界初のCIN治療薬のコンパニオン診断を開発し、CIN治療における患者の治療選択の個別化を目指している。E7発現量の高いCIN2-3病変では、局所のTH1型免疫誘導能がより惹起されることが期待されE7発現乳酸菌製剤(IGMKK16E7)の奏功率が高いと推測される。世界初のCIN治療薬のコンパニオン診断を開発し子宮頸部円錐切除術を避けられる若年女性が増加することで、子宮頸部円錐切除後妊娠の早産を減少させることが可能になる。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度に使用額が生じたのは、コロナ禍の直撃により、2019年夏に開始したE7発現乳酸菌製剤IGMKK16E7の医師主導治験(第I/II相ランダム化比較試験)の対象症例の集積に難渋したことと、それによる治験のキーオープン、ランダム化の割付結果の判明が遅れたことが最大の要因である。 そのため2023年度に治験登録患者の有効性と治験開始前の子宮頸部擦過細胞中のHPV16E7発現量の相関性の検討がずれ込んでしまっている。また2019年夏に開始したE7発現乳酸菌製剤IGMKK16E7の医師主導治験(第I/II相ランダム化比較試験)のキーオープン、ランダム化の割付結果を元にした臨床的有効性(CR: 正常化、PR:CIN1、SD:CIN2-3、PD:浸潤癌)とE7発現量との関連に関する検討も2023年にずれ込んでいる。さらにこれらの患者のE7特異的TH1型免疫応答も本試験の中で解析するため、免疫応答能との比較検討も2023年度に行うことを余儀なくされた。 結果として、本研究の最終解析結果が判明することが遅くなり、それを産婦人科関連、感染症関連、婦人科腫瘍関連の各学会や論文などで成果を発表することも2023年中にずれ込むことになる。
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