研究課題
卵巣癌は大半が腹腔内転移を伴う進行癌の状態で診断されるため、5年生存率は30%弱と低く、本邦では1年間で約1万3千人が罹患し、約4700人が死亡している。また、卵巣癌は当初抗癌剤に感受性を示していても、次第に耐性を示し再発率が高いことも予後不良の一因となっている。近年、分子標的治療薬が無増悪生存期間(PFS)を延長させることが示され臨床で用いられるようになったが、BRCA変異の有無によりPFS延長効果に差があることや、消化管穿孔等の副作用の問題から、進行卵巣癌の新たな治療の開発が急務である。我々はこれまでに、CD24陽性卵巣癌患者では、卵巣癌の主要な化学療法剤であるプラチナ製剤での治療予後が不良であり、その機序の一つとしてCD24によりEMT現象が促進されることを明らかにした。このような、初回治療前の時点で予後不良が予測されるような症例においては、既存の治療薬以外に効果のある薬剤を個々に見つけることができれば、予後不良卵巣癌の予後改善につながる可能性がある。そこで癌細胞から、癌組織の3次元的構造や微小環境に類似する癌オルガノイドを作製し、既存薬ライブラリーによる薬剤感受性スクリーニングを行って効果的な治療薬の候補を個々に特定することで、個別化医療を構築することを目指して研究を行うこととした。まず、オルガノイドの作製方法を確立するべく、種々の癌を用いて最適な条件を見出すことに取り組んだ。当院でインフォームドコンセントを得て採取した、卵巣癌または子宮体癌の手術にて摘出した組織の一部を用いてオルガノイドの作製をおこなった。
3: やや遅れている
オルガノイドの作製法の樹立に時間を要しているため。
オルガノイドの安定した作製法の樹立に取り組む。