研究課題/領域番号 |
20K09660
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
伊藤 潔 東北大学, 災害科学国際研究所, 教授 (70241594)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 子宮内膜癌 / adipophilin / 脂肪 |
研究実績の概要 |
プロゲステロンがadipophilin(細胞内の脂肪貯蓄や動員にかかわるタンパク)の発現を抑制するという報告に着目し、レセプターのレスポンスエレメントが同じであるコルチゾールでも同タンパクに影響があると考えた。子宮内膜癌におけるadipophilinの発現や悪性度との関連、またコルチゾールによる影響を研究した。Adipophilin、プロゲステロンレセプターの発現はいずれも免疫組織化学にて検討した。結果、免疫染色により子宮内膜癌細胞、間質においてadipophilinの発現が見られた。またその発現は低分化癌(G3)ほど上昇して見られた。プロゲステロンレセプターとは負の相関、増殖マーカーであるKi-67とは正の相関傾向が見られた。子宮内膜癌培養細胞での検討では、デキサメタゾン添加群では有意差をもって増殖能の増加が認められ、さらにadipophilin mRNAの増加が見られた。実験結果からadipophilinは確かにプロゲステロンにより発現が抑制されると考えられた。またadipophilinが低分化癌ほど発現しKi-67と発現の相関傾向もみられることから、adiopophilinは細胞内の脂質バランスに関与するなどして癌の悪性度を高めることが考えられる。さらにコルチゾールは癌細胞の増殖能を上昇させadipophilin発現も上昇させる。これらからストレスによりコルチゾールが生産されることで癌が悪化し、その機序に上記のようにadipophilinが関与していることが考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID-19の影響により、In Vitroに関する研究資材の調達が滞ったため。
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今後の研究の推進方策 |
細胞が脂肪を取り込むメカニズムに着目し、CD36の免疫組織化学を行う。さらに凍結組織を用いた脂肪滴染色とCD36との関係を明らかにする。CD36と臨床病理学的因子(癌の転移や増殖、ステージ等)との関連を解析する。培養細胞を用いた検討では、培地に脂質添加を行い、細胞への脂肪滴の産生を確認し、CD36ノックダウンの影響を検討する。また、脂肪滴産生が、癌化学療法に関与することが報告されているため、上記培養細胞実験では化学療法の効果について同様に検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の影響により学会がオンラインとなり、旅費がかからなかった。
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