研究課題/領域番号 |
20K09660
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
伊藤 潔 東北大学, 災害科学国際研究所, 教授 (70241594)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 子宮内膜癌 / 脂肪酸 / 脂質 |
研究実績の概要 |
免疫組織化学によって、子宮内膜癌組織におけるCD36およびアシルCoAデヒドロゲナーゼ長鎖(ACADL:Acyl-CoA Dehydrogenase Long Chain)の発現を調べた。CD36は長鎖脂肪酸を輸送する膜タンパク質であり、ACADLはβ酸化の初期反応を触媒する酵素である。リンパ節転移陽性症例において、CD36陽性の割合が有意に高かった。ACADLと臨床病理学的因子との関連は認められなかった。細胞増殖に対する脂質添加の効果を検討するために、同じレベルのCD36を有する乳癌培養細胞(T-47D)および子宮内膜癌培養細胞(AN3CA)を使用した。脂質はRefeed JNS(Remembrane、イタリア)を用いた。脂質の添加では、T-47DとAN3CAの両方において、非添加群と比べて添加群で有意な細胞数の増加を認めた。さらに細胞内脂肪酸のβ酸化を可視化するFAOBlue(フナコシ、日本)による検討を行った。FAOBlueは、青色蛍光色素クマリンの誘導体を含むノナン酸(C9)であり、4回目のFAOサイクルでFAOBlueが分解された後、クマリンはプロピオン酸から放出され、放出されたクマリンは405nmで励起された強い青色の蛍光を示す。脂質添加培地では、T-47Dはβ酸化活性を示す青色蛍光を示した。一方、AN3CAでは同じ条件下で蛍光が非常に弱かった。乳癌および子宮内膜癌は、細胞内脂質の取り込みとそれに続くβ酸化の経路を有すると考えられた。組織解析から、子宮内膜癌の脂質の影響には、脂質の取り込みが重要であることが示唆された。取り込まれた脂肪酸の増殖や浸潤に対するメカニズムに関して、複数での培養細胞での検討とリピドミクス解析による脂肪酸代謝の検討を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、細胞への脂肪酸の取り込みと代謝に関連する因子(CD36とACADL)について、子宮内膜癌病理組織標本を用いた免疫組織化学による解析方法を確立した。さらに培養細胞を用い、脂肪酸代謝(β酸化)を可視化する技術を用いて、同じくその評価系を確立することができた。培養細胞を用いた検討は、今後検討予定のリピドミクス解析を行うための予備実験の性質を有しており、評価系を確立したことによって、同解析を確実かつ速やかに実施することができる。また、組織解析については、リピドミクス解析の結果をヒト組織で評価するために重要であり、脂肪酸の取り込みと代謝に関する因子を評価は、その結果を評価するために重要である。
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今後の研究の推進方策 |
取り込まれた脂肪酸の増殖や浸潤に対するメカニズムに関して、複数での培養細胞での検討を行うが、既に子宮内膜癌培養細胞4株に対する脂質の影響の検討を進めている。脂質の細胞増殖、細胞浸潤に及ぼす影響に加え、CD36のノックダウンの影響を計画している。また、リピドミクス解析による脂肪酸代謝の検討については、委託先との協議を済ませており、サンプルの提出から解析方法までを確定している。ヒト組織を用いた検討については、今年度からさらに症例数を増やした解析を実施する(症例の選定に着手済み)。それら症例を用い、リピドミクス解析の結果を検証するが、具体的には脂肪酸の代謝に関連する因子についての免疫組織化学を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた学会参加に関して、オンラインでの参加を選択したため、旅費の支出がなかった。
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