脂質が子宮内膜癌の病態に及ぼす影響を確認するため、子宮内膜癌培養細胞Ishikawaを用いた検討を行った。アメリカ(MCN)、日本(JNS)、ベジタリアン(VTR)の食生活を模倣した添加用脂質を培地に添加し、Ishikawaの細胞増殖に及ぼす影響を検討した(72時間)。結果、溶媒対象と比較して、MCN添加のみで有意な細胞数の増加を認めた。さらに、MCN、JNS、VTRを添加した72時間後に細胞を回収し、LC-HSI/MS/MSシステム(熱エレクトロスプレーイオン化法)を用いた脂溶性・中性代謝物質の網羅解析を実施した(リピドーム解析)。検出とその後の解析には、29クラス935分子種が用いられた。階層クラスター解析の結果、JNSとVTRのプロファイルが類似し、MCNのプロファイルはその二剤と大きく異なった。MCNの増殖に関する脂質を明らかにするため、MCNでのみ高い値を示した脂質を抽出し、その中でもアシルカルニチンの高値に注目した。 エネルギー産生に関わるアシルCoAはミトコンドリア内膜を通過することができない。そのためアシルCoAのアシル基をカルニチンへ転移し、アシルカルニチンとしてミトコンドリア内膜を通過させる。アシルカルニチンはミトコンドリア内で再びアシルCoAとなる。癌ではこのアシルカルニチンが細胞内に蓄積することで、EMTをおこしたり蔵書に関与することが報告されている。さらにアシルカルニチンの細胞内動態に関与する酵素群のはたらきを検討中である。
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