本研究の目的は、医療技能のデジタル化により、卵巣腫瘍の革新的診断システムを開発することである。卵巣腫瘍の術前診断は、臨床情報、各種検査データを参考に、医師が良・悪性を推定している。熟練した画像診断医は、画像読影時に卵巣腫瘍の病理組織型まで推定している。人工知能技術を用いてこの医師の技能をデジタル化しシステムに実装することで高い診断精度を実現する。卵巣悪性腫瘍の早期発見手法として発展させ、卵巣悪性腫瘍の死亡率低下を目的とする。本研究は下記の4つのステップで卵巣腫瘍の診断システムの開発を行う。本研究期間においては1~2のステップを繰り返してシステムの性能を高め、有効性を検証した。当該年度は卵巣腫瘍として代表的な漿液性腫瘍の患者246症例分の血液検査および画像検査データを研究分担者のグループで解析を行った。様々な機械学習手法で血液検査データを学習し、良性・境界悪性・悪性の三値分類を試み、どの手法が最も良い精度で診断可能か検討した。問題点を抽出し、1~2のステップを繰り返して診断精度の向上を図っている。 1.卵巣腫瘍症例の診療情報、検査データの抽出・解析;名古屋大学産婦人科で治療した卵巣腫瘍症例の患者臨床情報、血液・画像検査データ、摘出物の最終病理組織型の情報を抽出し、研究分担者のグループで解析する。 2.システムの性能の評価;上記で使用していない卵巣腫瘍症例のデータをシステムに入力し、出力された良性・境界悪性・悪性の診断と病理組織型の正診率を評価する。 3.症例数を拡大し診断精度の向上を図る;名古屋大学産婦人科と複数の関連病院から成る東海卵巣腫瘍研究会の登録症例へと集積データ数を拡大する。 4.卵巣悪性腫瘍の早期発見に向けてシステムの発展;一般的な検診で収集可能な臨床情報・血液検査データと経腟超音波データで診断を可能にし、早期発見手法として実用化を検討する。
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