研究課題/領域番号 |
20K09669
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
宍戸 明美 大阪大学, 医学系研究科, 招へい研究員 (30838909)
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研究分担者 |
山本 浩文 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (30322184)
横山 雄起 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (60615714)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 卵巣癌 / 中皮細胞 / 癌幹細胞 |
研究実績の概要 |
卵巣癌は腹腔内浮遊播種病巣を伴うことが多く、化学療法に感受性を示すため、化学療法後に外科的治療など積極的な治療がおこなわれている。しかし、通常、寛解後5年以内に50-85%が再発し、再発後の平均生存期間は2年と報告されている。固形癌の転移研究が進む中で、卵巣癌の腹膜播種に関するメカニズム研究は遅れており、新しい治療法の開発に繋がっていない。私達はこれまでに3D培養系で中皮細胞が卵巣癌細胞に対してスフェロイド形成をはじめとする癌幹細胞様特性を促進させる足場となることを観察してきた。中皮細胞は漿膜の再生機能を有することが知られているが、体腔内では浮遊細胞としても存在しており、これが間葉系幹細胞としての機能を担い、腹水中の卵巣癌細胞の幹細胞性を亢進させて腹膜播種形成を容易にさせている可能性を考えた。本研究では浮遊中皮細胞は体腔内で間葉系幹細胞として働き卵巣癌播種巣のニッチを構成するという新たな仮説を立て、このことを検証し、そのメカニズムを解明する。本年度は卵巣癌細胞株と中皮細胞株を用いた2D培養条件下において3D培養条件下と同様に癌幹細胞様特性が促進するかどうかについて検討を行った。その結果、癌幹細胞マーカーの一つであるCD133の発現誘導が認められた一方で、他のマーカーの発現上昇は認められなかった。今後、癌幹細胞性に関する他の方法での検証も要すると考えられる。次年度以降は中皮細胞による癌幹細胞性賦与のメカニズム解明を含め、これまで行ってきた検討を引き続き行う。それと並行して、卵巣癌幹細胞を標的とした新たな治療法開発も行っていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度はヒト中皮細胞株Met-5Aを単層培養した上に卵巣癌細胞株CaOV3を播種した2D培養系を確立し、24, 48, 96, 120時間後のサンプルを回収し、CD133, CD44v9などの種々の癌幹細胞関連マーカーの発現変化をqPCRにて検討を行った。その結果、3D培養条件下とは異なり、癌幹細胞関連マーカーのうち、CD133のみ遺伝子発現上昇が認められた。当初の計画よりやや遅れているが、実験系の確立はできており、予定している癌幹細胞性に関する実験手技や今後計画している網羅的遺伝子解析、エピジェネティック解析、抗腫瘍効果の検討などについては、研究グループで日常的に行われている手法を用いるため、遅れを取り戻すことができる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は卵巣癌細胞株と中皮細胞株を用いた2D培養条件下における癌幹細胞性誘導について、癌幹細胞関連マーカー発現変化の検討以外のアプローチによって、更なる検討を行っていく予定である。コロナ禍で当初描いていたしっかりと時間をかけた深い研究活動が思うように出来ていない現状もあり、中皮―癌細胞連携に関する研究と共に、すでに研究室で確立してきた核酸治療薬による卵巣癌の癌幹細胞の治療法開発という結果が得られやすい研究も並行して実施することした。
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