研究実績の概要 |
卵巣癌は腹腔内浮遊播種病巣を伴うことが多く、化学療法に感受性を示すため、化学療法後に外科的治療など積極的な治療がおこなわれている。しかし、通常、寛解後5年以内に50-85%が再発し、再発後の平均生存期間は2年と報告されている。本研究では浮遊中皮細胞が間葉系幹細胞として働き卵巣癌播種巣のニッチを構成するという仮説を検証する。初年度はコロナ感染症のために研究計画が遅延したが、2021年度もコロナ感染症が続き研究が中断することが多く、特にラットを用いた動物実験が継続的に出来ず、細胞株を使った実験を中心にできるところから進めていった。癌幹細胞用の治療的microRNAであるmiR-4711をはじめとして、KRAS変異癌に効くmiR-4689, 難治性癌全般に効く人工核酸MIRTXなどのmicroRNAが卵巣癌細胞株A2780, Caov-3に対して有意な抗腫瘍効果を示すことを確認した。また癌幹細胞の陽性コンロトールの探索のために、HER2陽性のSKBR-3, Estrogen Receptor陽性のMCF7, トリプルネガティブMDA-MB-468 乳癌細胞について検討し、MDA-MB-468 が最も高いALDH活性を示し、2次元培養よりもスフェロイド培養系でCD44, CD44v9, CD166などの癌幹細胞マーカーの有意な亢進がみられ幹細胞性に富んでいることが示唆されたことからMDA-MB-468を陽性コントロールとした。更に、独自の手法で新規の癌幹細胞マーカー候補として精巣抗原Xを見出し、MDA-MB-468のスフェロイド培養を行ったところ2次元培養に比べて有意なX分子の発現亢進がみられたことから、幹細胞性を反映する分子である可能性がある。今後、卵巣癌のスフェロイド培養でX分子の発現を検討する。
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