研究課題/領域番号 |
20K09673
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
片渕 秀隆 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 名誉教授 (90224451)
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研究分担者 |
本原 剛志 熊本大学, 病院, 講師 (10457591)
田代 浩徳 熊本大学, 大学院生命科学研究部(保), 教授 (70304996)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 卵巣癌 / 環境物質 / アスベスト / タルク / 発癌 |
研究実績の概要 |
卵巣癌は婦人科悪性腫瘍の中で最も死亡率の高い難治性の疾患である。卵巣癌に対する効果的な早期スクリーニング法は現在まで確立されておらず、また発症の初期段階では特異的な症状に乏しいため、早期診断は困難であることが示されている。したがって、卵巣癌に対する予防法の探索は極めて重要な側面を担っていると考えられる。 従来、卵巣癌の危険因子として、アスベストやタルクなどの環境物質への曝露の関与が報告されているが、これらによる発癌メカニズムは未だに明らかにはされていない。本研究では、細胞実験、動物実験、そして臨床検体を用いた網羅的な解析を通して、アスベストやタルクに代表される環境物質がどのような機序で卵巣癌の発癌に関与しているかを明らかにすることを目的とした。そして最終的には、卵巣癌の発癌メカニズムから導かれる卵巣癌の予防に関する外科的戦略の開発を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在まで、各種in vitroでの細胞実験ならびにラットを用いた動物実験において、アスベストならびにタルクが有する発がん性について、解析をすすめている。 これまでの解析の結果、アスベストならびにタルクは卵巣表層上皮への曝露により、発癌に関わる活性酸素の発生源である鉄代謝に変化を与え、細胞内の触媒性2価鉄の増加をもたらすことが明らかにされた。ラットによるin vivoでの解析では、アスベストならびにタルクの暴露によって、卵巣表層上皮に異型が出現し、DNA二本鎖切断の増加が認められた。 現状、おおむね仮説通りの実験結果が得られており、研究は順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
今後われわれは、in vitroならびラットを用いたin vivoによって得られた実験結果について、ヒトの臨床検体を用いて、検証をすすめていく予定である。 近年、卵巣癌予防のため、NCCNはBRCA変異のある女性への予防的卵巣卵管切除を、ACOGはBRCA変異のない女性にも婦人科手術を受ける時の両側付属期切除もしくは両側卵管切除の検討を奨めている。今回われわれが行った解析結果から、アスベストならびにタルクは、卵巣表層上皮の鉄代謝を変化させ活性酸素の産生を惹起することで卵巣癌の発癌に密接に関わっている可能性が示された。 卵巣癌の発症の予防という観点において、外的因子が腹腔内に到達する経路を遮断するといった意味からも、卵管切除術が有意義である可能性があるため、実臨床においてもこれらの啓発を行っていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症への対応により、研究計画通りに実施できなかったため
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