研究課題
経済のグローバル化やシフトワークによる生活習慣の多様化により生活時間と体内時計のズレが生じ、その結果成人病や不妊のリスクが高まる。しかし、このズレがどう不妊に関係するのか定かではない。活動期での食事時間制限は成人病リスクの低減につながるが、生殖能力に関する知見は無い。本研究では、給餌時間制限がメスマウスの生殖能力に及ぼす影響を調べた。6週齢のC57BL/6Jメスマウスを以下の4群で飼育した。通常食(N)と高カロリー食(mHC)の餌を用い、それぞれ自由摂取群(ad libitum: AL)と活動期の8時間のみ給餌群(time restriction: TR)の計4群とした。飼育環境は温度25℃、湿度40-60%、L/D: 12/12とした。11週間後、過剰排卵処置を行い、卵母細胞を回収し体外受精を行った。TR群では給餌後急激に時間あたりの摂取カロリーと、それに伴う血中インシュリン値の上昇が観察され、肝臓のサーカディアン遺伝子の発現が増加した。一方、N-AL群は活動期で摂取量が増加していた。最終体重はN-AL群に比べ他の3群で増加した。血中総コレステロール、HDL、胞状卵胞数、採卵数そして形態正常卵数はmHC給餌群でN給餌群に比べ増加した(P<0.05)。N-TR群では発情周期がmHC-AL群に比べ遅延し(P<0.05)、HDLに対する総コレステロール比と閉鎖卵胞数が他の3群に比べ高くなり(P<0.05)、胚盤胞形成率が他の3群に比べて低下し (P<0.05)、卵母細胞質内活性酸素がN-ALとmHC-AL群に比べ増加した(P<0.05)。通常食の食事時間を制限すると生殖能が低下することが示された。食餌時間制限はカロリー吸収の抑制、脂肪代謝の促進により、成人病罹患リスクを低減するが、成人病罹患リスクの低い通常食における食餌時間制限は摂取カロリーが同等であっても吸収カロリーが低下し、結果として発情周期遅延、発育卵胞数の低下、卵母細胞内活性酸素の増加、そして胚盤胞発育率低下を招いたと考えられる。
2: おおむね順調に進展している
給餌時間制限がメスマウスの生殖能力に及ぼす影響を調べたところ、胚盤胞形成率、卵母細胞内活性酸素量等で違いが検出されている。
トランスクリプトーム解析の結果とあわせて、給餌時間制限がメスマウスの生殖能力に及ぼす影響を解析する。
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J Assist Reprod Genet
巻: 38 ページ: 71-78
10.1007/s10815-020-01973-6
巻: 37 ページ: 1815-1821
10.1007/s10815-020-01869-5
http://www.med.osaka-cu.ac.jp/reproduction/