研究課題/領域番号 |
20K09676
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研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
矢部 慎一郎 埼玉医科大学, 医学部, 講師 (50436458)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 合胞体性栄養膜細胞 / ES細胞 / 胎児胎盤環境 / 発生学的分子機構 |
研究実績の概要 |
本研究は、ヒトES細胞から胎盤合胞体性栄養膜をin vitroで誘導する際の時間特異的遺伝子発現に着目することにより、代謝や免疫応答等、機能をになう遺伝子推移から初期胎児胎盤環境の発生学的特徴を明らかにすることを目標とする。 胎盤の発生段階に伴い要求される酸素濃度は変動すると考えられるため、大気酸素濃度条件(20%)に加え着床期や妊娠中期を想定し 1%及び8%の低酸素環境でヒトES細胞からBMP4、A83-01(Activin receptor like kinase inhibitor)、PD173074(FGFR1 inhibitor)を用いたレジメンで8日間誘導し合胞体栄養膜を作成した。合胞体栄養膜細胞はHCG産生能を有し成熟すると多核化するため、機能評価としてはELISAを用いたHCG分泌能、形態評価としてはDAPI/VE-cadherinを用いた免疫染色にて細胞癒合能を検討した。結果は酸素濃度の上昇に比例して合胞体栄養膜細胞のHCG分泌能、細胞癒合能はともに上昇を認めた。一方で誘導中の合胞体栄養膜細胞に関しては、8%と20%では誘導初期から細胞癒合能が上昇していたが、1%では誘導後期になるまで細胞癒合はみられなかった。HCG分泌能は、誘導日数に応じて上昇を認めた。以上により、酸素濃度依存性に合胞体栄養膜の機能は向上するが、形態形成に関しては超低酸素下の妊娠初期と比較的低酸素下のそれ以降では、発生学的差異を有する可能性が示唆された。今後は、各発生段階別に組み合わせて最終産物の分子生物学的解析を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
まずES細胞をもちいた本研究を施行するために、ヒトES細胞の使用に関する指針に従い文部科学大臣への届出を行ったがこの過程に一年を要した。次にES細胞を用いた合胞体性栄養膜細胞の誘導には我々が報告した誘導諸因子を用いる予定であったが、この中でFGF receptor inhibitorの入手が国際的な感染拡大状況の中で困難であった。 今回、合胞体性栄養膜誘導では発生段階別に検体を採取して細胞離解の上、セルソータでのHCGをマーカーとして細胞分別を行う予定としている。しかし、細胞内にあるHCGに対する二次抗体結合のために細胞透過が必要であり、解析に必要な生細胞の確保が課題となっている。
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今後の研究の推進方策 |
合胞体栄養膜の誘導率を上げることをめざす。現在、細胞培地に用いているCorning Mtrigelに加え、xeno-freeのVitronetin XFの使用を考慮し、研究促進に役立てる。また、細胞解離からRNA採取までの時間短縮のため、誘導細胞の直視下laser microdissectiionにて検体採取を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
ヒトES細胞を用いた合胞体性栄養膜細胞誘導の研究環境整備が遅れたため。本来令和5年度に施行予定であった「ES細胞から誘導した合胞体栄養膜細胞の時間特異的遺伝子発現プロファイルの作成」については、令和6年度に施行する予定である。
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