研究課題/領域番号 |
20K09678
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
池田 悠至 日本大学, 医学部, 准教授 (80713453)
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研究分担者 |
清谷 一馬 公益財団法人がん研究会, がんプレシジョン医療研究センター 免疫ゲノム医療開発プロジェクト, 主任研究員 (30433642)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 子宮頸癌 / WEE1阻害薬 |
研究実績の概要 |
子宮頸癌細胞株であるCaski (HPV16あり), SiHa (HPV16あり) ,C33A (HPVなし, P53変異あり),および陰性コントロールとして、前立腺細胞株であるLNCaP (HPVなし, P53変異なし)を入手した。また薬剤はWee1阻害薬であるAZD1775、およびシスプラチンを入手した。
各種細胞株に対するin vitroでのWee1阻害剤AZD1775とシスプラチンの組み合わせによる治療効果を評価するため、シスプラチンおよびAZD1775の併用群/非併用群を群分けし、その殺細胞能を各細胞株を用いてMTTアッセイにて評価した。それぞれの細胞株におけるシスプラチンおよびAZD1775のIC50を算出し、またシスプラチンとAZD1775の併用時のIC50も算出を行った。その結果、AZD1775のIC50が最も低いのはSiHa細胞である事があきらかとなり、同時にシスプラチンにおけるIC50も低く、Combination indexは0.771であった。 また、同様にCaski、SiHa、C33A、およびLNCaPを用いてColony formation assayにて各細胞株のシスプラチンおよびWee1阻害薬併用/非併用時の腫瘍形成能を評価した。SiHaではLNCaPと比較し、有意に増殖抑制能がある事が明らかとなった。その差は特にAZD1775とシスプラチンを併用した際に顕著であった。
以上の事からシスプラチンとAZD1775の併用は子宮頸癌細胞株に有益な治療の組み合わせである可能性が推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験環境の整備より研究を開始し、1年目においては限定的な結果となる事が予想された。その中で2つの実験系を終了する事が出来たため、順調に研究は推移していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
子宮頸癌細胞株を用いたシスプラチンとWee1阻害薬AZD1775のMTT assay結果から子宮頸癌 HPV16型 SiHaにおいて、相乗効果がもたらされたことが確認された。 今後、実際に殺細胞能的な動向を示す際に細胞死が誘導されているか、およびその際にどのような周辺タンパク質の変化が起きているかが検討されるべきと考える。また、放射線を上記に加えた際にどのような変化が起きるかが探求されるべきと考える。 上記を明らかとするためにWestern blottingおよびFlow cytometryを行い、同効果の背景にある周辺タンパク質の状態、およびDNA損傷に準じたアポトーシスの増加がこの相乗的な細胞死に関与しているかを検討する事とする。また、放射線使用下にてシスプラチン、シスプラチンとAZD1775の併用、およびAZD1775の単剤投与を比較し、殺細胞能にどのような違いが生じるかを明らかとする。また本機序にはTP53の不活化が大きく寄与する事がその基礎的背景から強く疑われる。そのため、上記の実験系をTP53を不活化させた株とさせていない株で比較し、それらをMTT assayやColony formation assayにて比較する事でAZD1775の殺細胞能に関わるTP53の役割の理解の一助になると思われる。最終的にはin vivoにおける上記併用効果の検討を行いたいと考えているが、それに関しては次年度には施行が困難な見通しである。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度に予定していたWesternblot関連の機材、ならびに実験材料購入を研究計画変更およびコロナの影響により納期遅延のため翌年度とした。また、コロナ関連で予定していた学会参加なども取りやめとなり、計上していた予算が賄われなかった。 同余剰予算を用いて翌年度に細胞株を増やし、今までの研究結果のValidationを行うとともに、今後の研究計画においても当初の予定より3株増やした形で研究実施を進めていく事を計画している。 また令和2年度は学会参加は特に行わなかったが、令和3年度は研究結果を発表する場として、オンライン形式の学会であったとしても積極的に参加する事を計画している。
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