研究課題/領域番号 |
20K09679
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
根岸 靖幸 日本医科大学, 医学部, 准教授 (50644580)
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研究分担者 |
桑原 慶充 日本医科大学, 医学部, 准教授 (40373013)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 早産 / 流産 / 自然免疫 / NKT細胞 / マクロファージ / プロゲステロン / 無菌性炎症 |
研究実績の概要 |
最も多い産科合併症である流早産は病原体感染が主要な原因と考えられてきたが、近年感染が関与しない無菌性炎症による流早産がかなりの割合で存在することがわかってきた。本研究ではマウス実験を中心として無菌性流早産の更なるメカニズム解析を行うとともに、免疫学的手法を用いてその予防因子の検索を行う。そしてこれら因子のヒト胎盤中の免疫細胞に対する効果を検討する事により、臨床における「自然免疫制御による流早産治療」という新しい治療概念への足がかりを構築していくことを目的とする。 本研究期間では、invariant natural killer T (iNKT)細胞の活性化剤である糖脂質α-ガラクトシルセラミド(αGC)投与による、無菌性マウス流産モデルの解析を行なっている。その中でプロゲステロンの予防投与はαGC投与マウスの流産を改善させ、その時子宮局所ではiNKT細胞やマクロファージなどの抗原提示細胞の抑制が生じている知見を得た。プロゲステロンの作用点を検討したところ、その受容体の多くはマクロファージに発現していることを見出し、プロゲステロンの治療作用点である可能性がある。さらにex vivoの実験において、脾臓から分離したマクロファージは、プロゲステロン添加によりIL-12/IL-10(炎症性/抗炎症性マーカー)比を有意に低下させ、プロゲステロンの自然免疫系に対する免疫抑制作用を支持する結果を得ている。 さらにヒト早産胎盤の解析において、絨毛膜羊膜炎を有さない原因不明早産では上記マウスと同じくiNKT細胞やマクロファージ、樹状細胞などの自然免疫系の異常活性化が認められている。iNKT細胞のリガンドは未知のものも含めて生体内に多く存在すると言われており、マウス、ヒトともに胎盤での無菌性炎症にはこれら自然免疫系の活性化が重要である可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
これまでの研究期間において、αGC投与による、無菌性マウス流産モデルを中心に解析を行なっている。その中でプロゲステロンやNKT細胞、マクロファージ、樹状細胞などの自然免疫系が重要な役割を担うことを示してきた。またヒト早産対バン解析においても、絨毛膜羊膜炎を伴わない早産ではNKT細胞をはじめとする自然免疫系細胞の異常活性化、さらに炎症反応のトリガーとなるHigh mobility group box-1(HMGB1)とよばれるアラーミンが重要な役割を担うことも示しておりマウス、ヒト両面から流早産と無菌性炎症についての総合的な理解に寄与していると考えられる。また子宮内膜症における炎症についても本研究で得られた智慧を応用し、さらに広い範囲での研究活動を行なっている。
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今後の研究の推進方策 |
今後はαGC投与による、無菌性マウス流産モデルを中心とした解析をサライ推し進め、組織学的検索、遺伝子レベルでの検討を行なっていく予定である。これまでの結果を論文としてまとめる予定である。 また妊娠維持機構について、マウスを中心とした様々なサイトカイン(特にIL-1β、IL-18)の動態にも着目していく。これまで妊娠維持に悪影響であると考えられてきたIL-18やIFN-γが、胎児の成長には必要である知見も得ており、こちらは「生体維持、恒常性維持に必要な無菌性炎症」という概念を構築しようと計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在、本研究は予定通り進行している。該当年度の所要額と実支出額で5,909円の差がでたが、概ね予定通りの試薬、実験消耗品購入が実施されていると考えられる。無駄の内容、次年度も計画的に研究費を使用していく予定である。
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