研究実績の概要 |
子宮頸がんの発がん因子としてヒトパピローマウイルス(HPV)感染が挙げられるものの、実際には感染者の極一部のみにがんが発生するそのメカニズムは不明である。本課題では宿主の環境因子に着目し, 将来の子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)に関する診療・予防戦略において重要な情報を収集し解析している。 従来より、我々は腟内のサイトカイン発現レベルとマイクロバイオームとの相関について解析し、その結果を報告してきた。その一つとして、腟内において前がん病変の進行に伴い各種サイトカイン発現レベルの変化を見出している。今回我々はCINの進展、退縮におけるメタボロームの果たす役割を解明するために、患者から子宮頸腟部粘液検体を採取し質量分析計を用いてメタボローム解析を行った。さらに、腟内メタボロームとCIN3+との関連を解析するため、正常およびCIN3、浸潤がんの患者から腟内分泌物を採取し、病変との相関について質量分析計を用いて解析を行った。特に、サイトカイン発現に相関の高いNF-Kb発現レベルとの関連を調べるために、正常においてNF-Kbの値が低い集団をコントロールとし、CIN3+においてNF-kbの発現レベルが高い集団を抽出し、腟内メタボロームとの相関を調べた。その結果、NF-kbの発現レベルに正相関を示すものとして、Oxidized glutathione, Nicotinamide, Ophthalamic acid, 2-Hydroxybutric acid,Citric acidがあり、負相関としてXanthine, 4-Hydroxyproline,CMPが抽出された。これらの分子は炎症が惹起されている環境の中で代謝の変化がおきており、なおかつ病変の進行に伴い代謝の変化がおきている分子といえる。
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