研究課題/領域番号 |
20K09687
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
北尻 真一郎 信州大学, 医学部, 特任准教授 (00532970)
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研究分担者 |
三輪 徹 京都大学, 医学研究科, 客員研究員 (70535591)
岩城 光宏 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 副チームリーダー (30432503)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 内耳蝸牛有毛細胞 / TRIOBP / ミオシン |
研究実績の概要 |
内耳有毛細胞の不動毛は音を受容するアンテナの役割を果たしており、その構造ならびに機能の破綻は聴覚の低下・喪失につながると考えられている。このアクチン線維からなる不動毛では、複数のミオシンが存在し形態形成や分子輸送に関わっていることが知られているが、そのミオシン活性調節機構については殆ど明らかにされていない。本研究では、『アクチン束化タンパクTRIOBPの役割解明研究』の一環として、TRIOBPによるミオシン制御の役割について検討するものである。 本研究提案は、TRIOBP抗体を用いた免疫沈降実験結果でPPP1R12C(MBS85; protein phosphatase 1 regulatory subunit 12C)が相互作用タンパクとして検出されたことによる。研究計画である、1)ミオシン2 aによるしなりの制御機構の解明、および2)様々なミオシンによる分子輸送の制御機構の解明のうち、本年度は、実験系の立ち上げに時間を費やした。すなわち、1)DNAバネによるナノイメージングを行うために「蝸牛有毛細胞へのDNAバネの導入実験」を行った。ミオシン活性を調べるためには成熟期の有毛細胞評価が必要であるため、adultマウス(C57BL6J, 4wk齢)の内耳蝸牛を用いた。サンプルは、サーフェスとHemi-cochlea(内耳蝸牛半割)の2種類にて行い、いずれもガラスキャピラリーにてDNA溶液をコルチ器近傍に注入し、ミクロ電極で目的部位を挟んでエレクトロポレーションした。最初に、蛍光タグのプラスミドによる有毛細胞への導入条件を設定した後、DNAバネ(4HB)を用いた導入を試みた。CUY21EDIT(BEX社)の[Injecto Poration 50ms on, 100ms off / 8 pulses]にて行った結果では、有毛細胞へのDNAバネの導入が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今回遅れた理由として実験系の確立(adultマウスのHemicochlea法)における以下の問題点が挙げられる。 ・遺伝子導入効率:有毛細胞へのDNAバネ等遺伝子導入は確認されたものの、導入条件を様々検討したが、効率が期待ほど高くならなかった。 ・ナノイメージ評価:3DのHemi-cochleaへの導入箇所によりイメージングできない部位があった。 ・細胞単離:単離有毛細胞での観察なら評価可能であることから、既報に従いマウス蝸牛の細胞単離条件を検討したが、単離後の有毛細胞の生存が非常に悪かった(数10%以下)。 以上よりHemi-cochlea法での検討は一旦中断し、実験計画の変更が望ましいとの結論に至った。
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今後の研究の推進方策 |
進捗状況から、次年度では実験計画内容を一部変更することとした。 すなわち、DNAバネによるナノイメージングで評価が容易な単離有毛細胞での評価系の確立を目指し、比較的単離有毛細胞の正常維持が可能なモルモット内耳蝸牛での検討を行う。ここでモルモットの遺伝子改変個体はないため、TRIOBPの内耳KOモデルを作るために、AAVを用いたCas9 KOモデルを作成し、マウスをモルモットに変更して同様の検討を進める予定である。 既にモルモットの蝸牛有毛細胞において、TRIOBPが不動もうの根に存在することを免疫染色で確認している。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験環境のビルドアップ及び研究分担者の異動などにより実験が予想よりも遅く進行し、必要器材が少量で済んでしまったため。 次年度使用額は令和3年度請求額と合わせて消耗品費として使用する予定である。
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