研究課題
DNAのメチル化を始めとするエピジェネティックな変化が、RNA合成、ひいてはタンパク質の発現を抑制することから、癌化メカニズムの一つとして広く認識されている。また、癌細胞の不均一性獲得は、エピゲノムによる可塑性に起因するとされている。申請者は、「頭頸部癌におけるエピゲノム解析」に関する研究を継続的に行い、最近は、「脱メチル化機構」に関する報告を行っている。これまで、DNAメチル化、ヘテロクロマチンなどの“Epigenetic inactivation”に関する研究が盛んに行われてきたが、近年は、“Epigenetic activation”という視点での研究が注目されている。このactivationの機序には、DNA脱メチル化酵素TETによるDNA脱メチル化と、クロマチン構造の動的な変化によるスーパーエンハンサー出現などによる転写亢進などがあげられる。今回、Epigenetic inactivationとactivationの両面からのアプローチによる頭頸部癌におけるエピゲノム機構の解明とリアルタイムモニター法の確立を目指すことを目標としている。本年度も、昨年と同様に、リキッドバイオプシー検体を69サンプル収集した。中咽頭癌、口腔癌を中心にリアルタイムがエピゲノム動態を評価するために定期的に採血し検体を収集した。再発症例を中心に解析を進めた。本年度は、原発不明癌のリキッドバイオプシーによる原発部位の特定のための研究を行った。研究期間を1年延長し、リキッドバイオプシーによる頭頸部癌の病勢の把握の手法の研究を続ける。
3: やや遅れている
リキッドバイオプシーによる血液循環DNAのメチル化解析は順調に進んでいる。昨年度は、原発不明癌のサンプル収集とリアルタイムメチル化解析を行い原発部の特定に重要な結果を得ることができた。今後も解析をすすめていく予定である。
①5hmCのゲノム上の分布情報をTAB-Seq法によって調べる。②クロマチン動態に焦点をあてたエピゲノム状態を調べる。③リキッドバイオプシーによるリアルタイムモニタリング法を確立する。この3つの研究により、Epigenetic inactivationとactivationの両面からのアプローチによる頭頸部癌におけるエピゲノム機構の解明とリアルタイムモニター法の確立を目指している。頭頸部癌の新規治療法の確立、早期癌の発見につながるモニター法の開発につながるように研究をすすめていく。
本年度は、リキッドバイオプシーからのサンプル収集を行い解析した。1年間研究機関を延長しデーターをすべてまとめ報告する。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件)
Laboratory Investigation
巻: 103(1) ページ: 100020
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耳鼻咽喉科臨床
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