研究課題/領域番号 |
20K09691
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
今井 貴夫 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (80570663)
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研究分担者 |
太田 有美 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (00598401)
原田 祥太郎 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (10824740)
島田 昌一 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (20216063)
佐藤 崇 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (30756002)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 耳石動眼反射 / 半規管動眼反射 / 眼球運動三次元解析 / 遠心力 / 偏中心回転 |
研究実績の概要 |
当研究の目的は、日常の動作で生じる回転刺激と直線加速度の両者が同時に加わった際の前庭動眼反射を評価する検査法を確立することである。そのために、実験動物としてマウスを使用する。 2020年度に採取した直線加速度刺激装置でマウスに直線加速度のみを負荷した際に誘発された眼球運動の解析を2021年度に行った。直線加速度刺激装置にて直線加速度を負荷した際には装置による移動を代償する眼球運動は誘発されなかった。その代わり、移動により生じる直線加速度と重力との合力であるgravito-innertial acceleration(以下GIA)と重力とのなす角度を代償する眼球運動が誘発されていた。すなわち、移動により生じた直線加速度を傾斜により生じた直線加速度と解釈した眼球運動が生じていた。このことが正しいかどうかを検証するため、実際にマウスを傾斜させ、その際に誘発された眼球運動を解析し、比較検討を行った。直線加速度刺激装置により生じた眼球運動と、この際のGIAと重力とのなす角度と同じだけ傾斜させた際に生じた眼球運動は全く同じであった。すなわち、定性的、定量的に直線加速度刺激装置で誘発された眼球運動と傾斜時の眼球は全く同じであることがわかった。この内容を論文としてまとめ、Scientific Reports誌に「Development of a new method for assessing otolith function in mice using three-dimensional binocular analysis of the otolith-ocular reflex」というタイトルで論文として発表した。 また、2021年度は当研究の目的である回転刺激と直線加速度刺激の両者を同時に加えた際に誘発された眼球運動の記録を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当研究の目的は、回転刺激と直線加速度の両者が同時に加わった際の前庭動眼反射を評価する検査法を確立することである。そのためには直線加速度のみを加えた際の前庭動眼反射を明らかにする必要がある。直線加速度のみを加えた際に誘発されるマウスの両眼の眼球運動を三次元解析した研究は皆無であった。2021年度にそれを明らかにし、Scientific Reports誌に「Development of a new method for assessing otolith function in mice using three-dimensional binocular analysis of the otolith-ocular reflex」というタイトルで論文として発表した。当研究の目的を達成するためにはこのデータを使用する必要があるので、途中経過を論文として完成させたことは研究が順調に進展している証である。 また、回転刺激と直線加速度刺激の両者を同時に加えた際に誘発された眼球運動の記録を2021年度に終了しており、すでに解析を始めている。その結果、予備的ではあるが、回転刺激と直線加速度を同時に加えた際の前庭動眼反射の性状がほぼ解明できている。よって、2022年度内に当研究を終了させることができる見込みは十分にある。
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今後の研究の推進方策 |
すでに記録し終えた回転刺激と直線加速度刺激の両者を同時に加えた際に誘発された眼球運動の解析を進めていく。この予備的な解析結果より、偏中心回転時のみでなく、傾斜時にも回転刺激により半規管誘発の前庭動眼反射が生じていることが明らかになった。よって、当初の研究計画の偏中心回転により回転刺激と直線加速度刺激の両者を同時にマウスに負荷する実験に加え、傾斜角度を素早く変化させることにより、重力による直線加速度だけでなく、回転刺激をも加える実験を追加する必要が生じた。そのためには、新たな刺激装置の開発が課題であったが、それはすでに解決しており、そのような刺激装置を完成させ、データの採取を行っている最中である。2022年度中にこれらのデータの採取を終え、解析し、論文として発表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(未使用額が発生した状況) 2021年度に、マウスの偏中心回転刺激実験をメインに行う予定であったが、直線加速度刺激実験のデータがまとまったため、計画を変更し、その論文作成を行うこととしたため、未使用額が生じた。 (次年度における未使用額の使途用途) 新たに、傾斜速度を速くし、傾斜による重力加速度に加え、回転刺激をも加える実験の必要が生じたため、未使用額はその経費に充てることとしたい。
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