研究課題
頭頸部扁平上皮癌では、STAT3の活性型(pSTAT3)強陽性例で予後が不良になる。また、放射線療法や化学療法にてpSTAT3の発現が増強されることも報告される。近年、STAT3の活性化を選択的に抑制できるSOCS1アデノウィルスベクター(AdSOCS1)が開発された。本研究では頭頸部癌に対するAdSOCS1の効果を検討した。頭頸部癌細胞株からAdSOCS1の増殖抑制作用があり、アデノウイルスベクター受容体が発現が確認できた中咽頭癌細胞株(Detroit562)と舌癌細胞株(SCC-9)を用いている。AdSOCS1がpSTAT3の発現を抑制し、G2/M期を抑制してアポトーシスを促進することを明らかにしていた。この1年間には、Detroit562とSCC-9をヌードマウスの背中皮下に注入して癌腫を作成した。腫瘍体積が100mm3になったところからAdSOCS1とAdLacZを腫瘍周 に注入した。いずれの細胞株においても腫瘍の 大が抑制され、in vivoの実験系におけるAdSOCS1の有用性を示した。次に、AdSOCS1の細胞増殖抑制がアポトーシスと細胞周期の停止によることを明らかにしていたので、さらにそれらの細胞内シグナル伝達機序について検討した。AdSOCS1が両細胞株共にG2/M期を抑制したが、JAK inhibitor IはDetroit562株におけるG0/G1期を、SCC-9株におけるG2/M期を抑制した。また、AdSOCS1はpSTAT3とp-p44/42 MAPKの発現を抑制し、さらに抗アポトーシス蛋白のBcl-xLの発現を抑制した。一方、JAK inhibitor Iでは、Bcl-xLの発現を抑制されず、MEKinhibitorにてBcl-xLの発現が抑制されたのはSCC-9株のみであった。この1年間は臨床検体を用いてアデノウイルスベクター受容体とpSTAT3の発現の有無を検討した。
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